第5話 ステータス

「アーリー。いえ、貴方は、どこの誰かしら?」


「...ッ!?」


 サァァッと血の気が引いた感覚があった。なんでばれた!?この場合、どう答えるのが正解なんだ…


「え、っと…」


 俺はすでに、家族との関係を壊したくないと心から思えるほどに、この世界を好きになっていた。どう、しよう...


「あぁ、隠さなくていいのよ?ただ、確かめておかないといけないでしょう?それに、今まで一緒にいたアーリーは貴方。それは揺るぎ無い事実よ」


 拍子抜けした。もっと責められたりするもんなんだと勝手に思っていた。だって、自分の息子の中身がどこの誰かもわからない人間なのだから。


「か、母様は、それで、良いのですか?自分の息子が本当は誰かもわかっていないのに…」


「アリオスト。確かに、思うところがないわけではありません。ですが、貴方がアリオストになったのは、何年も前のことではなくて?それこそ、生まれた時から、とか。ならば、私のとっての、いえ、私たちのとってのアリオストは、貴方なのです」


「分かっていて、何も言わなかったのですか?なぜ…」


「それは…」



「お前が、話してくれるのを待とうと思ったからだよ」


「なっ…!と、父様!?」


「私たちもいるよ」


「兄様たちまで…!」


「アーリー、私たちはな、お前のことが大好きだ。だからこそ、違和感に気が付けた。だが、お前がいつか自分のことを話してくれたら、と思っていたんだ。だが、よく考えれば難しいよな。家族から拒絶されるかもしれない。聡いお前が、そのことに気付かないはずがない。すまなかった」


 そういうと父様は俺に頭を下げた。兄様たちや母様まで。


「そんなことは…!みんな顔を上げてください!」


 俺がそう言うと、みんなは顔を上げてくれた。そしたらロー兄様が、


「アーリー、もし良かったら、お前のことを聞かせてくれないか?大丈夫、私たちはお前のことを絶対に拒絶したりしない。約束しよう」


「兄様……分かりました。そんなに言ってくれてるのなら、話します。俺のこと...前世について」


 俺はそう言うとみんなに話し始めた。俺には前世の記憶がある事。気付いたらこの世界にいたこと。アリオストの中身は初めから俺だったということ。


「…とまぁ、こんな感じです。なので、俺は少し大人びていると思われているのかもしれませんね」


「こことは違う世界…まさかそんなものが存在するなんて…それに、やはりアーリーは初めから…」


 みんなは驚きを隠せないようだった。


「まぁ、俺のいた世界の住人からしたら、魔法がある世界なんて空想上のものだったので、この世界に来て、とても驚きましたよ。あと、ずっと隠しててごめんなさい。でも、俺が転生したのがこの家でよかったです。家族は温かいし、俺が隠し事をしているのに気が付いていたのに、見守ってくれて、それに、歩み寄ってくれて、ありがとうございました...!」


「いいのですよ。僕たちがしたかったことなのですから!」


「ビス兄様…」


「さ、お話はこれでおしまい。魔法の練習を始めるわよ。まずはステータスの確認からね。アーリー、心の中ででも、唱えてでもいいわ。『ステータス』と唱えてみなさい」


「はい、母様」


「おお、今から魔法の練習をするのか。どれ、私たちも見ていこうじゃないか」


 とりあえず声に出してみよう。


「『ステータス』」


 すると、俺の目の前にゲームとかでよく見る半透明のウィンドウが出てきた。あ、触れる。そこに書かれていたのは…


---------------------

【情報】 

 名前:アリオスト・レグシェル

 種族:人族

 年齢:5歳

【能力値】

 レベル:1

 体力:500

 筋力:200

 魔力:1000

 防御:100

 俊敏:100

【スキル】

 《鑑定》《言語理解》《アイテムボックス》《魔力操作》《隠蔽》

【適性】

 《想像魔法》

【称号】

 《想像魔法の使い手》《転生者》

       ▽

【開示】ON/OF

---------------------


 な、なんじゃこりゃ。


「アリオスト、確認できたかしら?【開示】という文字があるでしょう?一度、それをONにしてくれるかしら?」


「分かりました」


【開示】をONっと。

 すると、プレートの色が少し濃くなった。これでみんなに見えるようになったみたいだ。


「どれどれ…?こ、これは、どういうこと!?魔力値が1000!?」


 あーやっぱなんかおかしかったのか...そんな気がしたよ…


「か、母様?どこかおかしかったのでしょうか...?」


「おかしいも何も、貴方の年でこの魔力値、高すぎるわ!水晶が割れた時から魔力は多いと思っていたけれど、まさかこれほどなんて…」


「待てリリー、水晶が割れた?まさか魔力測定に使うあの水晶か!?聞いていないぞ!?」


「そういえば、まだ話していませんでしたね...この子はこの間、教会で使った魔力測定の水晶を割ったのです。たしかあの水晶で測れる最大の魔力量は300程度...5歳でそれ以上の魔力を持っているなんて…神父様もとても驚いておられましたわ」


 おおう、あれそんなにすごいことだったのね...


「アーリーの魔力量の多さはよくわかった。それで、他はどんな感じなのだ?ふむふむ。な…!どれだけスキルを持っているのだ!?それにアイテムボックスに鑑定スキル!?この二つは相当なレアスキルなのだが…もう、訳が分からんな…」


「なんかすみません…」


「ね、ねぇアーリー?この、想像魔法…?ってのは何だい?というか、ほかの魔法の適性がないみたいだけど…」


「え?あ、本当だ、なんだろ、これ」


「アーリーもわかりませんのね。ならばちょうどいいでしょう。この鑑定スキルを使ってみなさいな」


 どうやって使うんだろう…?そう思ってステータスプレートの《想像魔法》の部分に手を伸ばすと…


 ピコン♪

 と音が鳴って、


 『スキル《鑑定》が発動されます。』

 というウィンドウと共に、


--------------------------------------

《想像魔法》

 魔法属性の適性の有無に関係なく、使用者の想像力によっては等級に関係なくどんな魔法も使うことができる。

--------------------------------------


 と、説明文が出てきた。


「アーリー、なんと出てきたのです?」


 あ、皆には見えないのか。


「えっとですね…」


 鑑定結果をみんなに伝えると…


「な、なんという…もう、言葉が出てきません...」


 ですよね、俺もそう。もー意味わからん。


「ほかにもいろいろあるみたいなので、見てみますね」


 そうしてすべて鑑定し終えた俺は…



 天を仰いでいた。


 鑑定結果はこんな感じだった。まずはスキル。


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《鑑定》

 物体の名前や状態、能力値などを鑑定することができる。

 自分より能力値の優れているものや、《隠蔽》スキルを使用しているものは、鑑定できない。


【称号】《転生者》により、上記の制限は解除される。

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 つまり全部鑑定できちゃうんすね…


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《言語理解》

 相手の言葉が何でもわかる。ただし、魔物や動物には適用されない。常時発動。

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 いや、これは普通にありがたい。


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《アイテムボックス》

 亜空間の中に荷物を収納できる。ただし、命のあるものは入れることはできない。


【称号】《転生者》により、容量は無制限となり、内部の時間も経過しない。

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 oh...なんというかこれは...旅の悩みが解消されそうだなぁ!(現実逃避)


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《魔力操作》

 体内の魔力を操作できる。

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 ほっ、これは普通そうだ。


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《隠蔽》

 自身のステータスを隠すことができる。


【称号】《転生者》により、他人が見られるステータスの変動も可能となる。

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 こ、これはっ…!なんて都合のいいスキル…!

 てかさっきから《転生者》の称号活躍しすぎでしょ…


 スキルだけでおなかいっぱいなんだけども…と思いつつ、一番よくわからない【称号】を鑑定してみた。


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《想像魔法の使い手》

《想像魔法》の適性があるものに与えられる称号。なお、この称号を持つ者は、魔力量が2倍になり、魔力回復速度が上がる。

------------------------------ー-------


 えー...どんな反応すればいいんだよ…つまり俺の素の魔力量は500…いや、母様の話でいくとそれも十分多いんだけど。つか2倍て……よし、これについて考えるのはもうよそう。もう知らん。


 最後に一番気になっていた《転生者》という称号。これがまた…ハァ…


--------------------------------------

《転生者》

 転生したものに与えられる称号。

 この称号を持つ者は、【スキル】《鑑定》《アイテムボックス》《隠蔽》のスキルを初めから持つ。

 また、特定の【スキル】の効果を上げることが出来る。また、それらを解除することも可能。

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 スキルノコウカヲアゲル……?ナンダロウ…コレ…?



 …とまぁ、こんな感じで意味が分からんかった。


「ハハッ...アハハハッ」


「ア、アーリーが壊れた!?大丈夫か!?」


「ハハッ...ふぅ…大丈夫です。もう治まりました」


「ほ、本当に大丈夫か?大丈夫ならいいのだが…」


「はい。すみません。ところでみんな、鑑定結果聞きますか?」


「正直聞きたくないが…途中で聞くのをやめるわけにもいくまい。覚悟を決めよう」


 鑑定結果を聞くのに覚悟って…


「では…」


 みんなに鑑定結果を伝える。


「情報量が多すぎて頭が追い付かんのだが…確かにこれは笑うしかないな…」


 分かってくれたか。父様よ。


「この後はどうしましょうか…魔法の練習をするのも良いのだけれど、頭を整理する時間が欲しいのではなくて?」


「そう、ですね…そうしてくださるとありがたいです」


 俺がそう言うと、母様は頷いて


「なら、今日はこれで終わりにしましょうか」


 と告げた。


 これが、初めての魔法の練習の時間だった…



 …あれ?もしかしなくても俺、今日魔法らしい魔法なんもやってない?


 ―――――――――――――――――

 作者です。


 長かったぁ...The・チートです。

 ただひたすらにチートを描きたいだけなので、これからもグダグダチートしてくと思います(?)

 それと、更新頻度についてなのですが、取り敢えず一章は毎日更新に変えたいと思います。まぁあと少しですが。


 次回:今度こそ…?


 またお会いしましょう。ではでは〜


《転生者》の効果を一部書き換えました。

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