終章 二年後

第33話

『甲子園十二日目。準々決勝第二試合。さあ、全国の高校野球ファンが注目する一戦がいま始まります。

 解説には横浜よこはま国際こくさい大学だいがく付属ふぞく高校監督、西村にしむら敦也あつやさんにお越しいただいております。どうぞ、よろしくお願いいたします』

『はい。こちらこそ、よろしくお願いします』

『実況はわたくし、長谷川はせがわが務めさせていただきます。いやあ、西村さん、甲子園百回記念となる、今大会だからこそ実現する、そんな組み合わせですよねえ』

『ええ、そうですね。夏の甲子園で福岡から二校はありませんから』

『百回記念大会ということで、今年、福岡からは二校が甲子園に出場しております。そしてこの選手権大会準々決勝、福岡北部大会を勝ち上がってきた西日本にしにほん国際こくさい大学だいがく付属ふぞく高校と南部大会を勝ち上がってきた福岡南ふくおかみなみ高校の一戦と相成ります』

『すごいですよね、どちらもベストエイトまで勝ち上がってくるんですから。しかも両校、勝ち方も非常に素晴らしかったので、勢いもある。非常に楽しみな試合ですね』

『そうですねえ。いまカメラに映っておりますのが、プロ注目、高校ナンバーワン遊撃手ショートと称される小南こなみ剛広たかひろ。ここまでの三試合で、十一打数五安打、一本の本塁打を含む三長打と評判にたがわぬ実力を発揮しています』

『すごいのが打撃以上に守備が評価されていることですね。間違いなく飛び抜けた選手と言えます』

『そうなんですよねぇ。いちばんの売りが打撃じゃないんですよね』

『そうなんです。とくに小南君と加納かのう君で固める福岡南の二遊間は、なかなか打球が抜けてくれませんから』

『ええ。これまでの三試合でも素晴らしいプレーで見る者を魅了してきました。福岡南高校は三年生が五人しかいないチームなんですが、ちゃんとその五人がチームを引っ張ってるんですよね』

『そうなんですよ。やっぱり、センターラインがきっちり固まっているので、守備にグッと締まりがありますね』

『そうですねぇ。この試合の注目ポイントとしてはやはり、両校エースの投げ合い、ということになるでしょうか?』

『そうなると思います。西国にしこく松原まつばら君も福岡南の大森おおもり君も、ここまで非常にいい投球を見せていますからね。どちらの打線も強力ですが、それでも三点以内の接戦になるんじゃないでしょうかね』

『なるほど。ちなみに三回戦、西国大付属の松原投手は、春の地方大会で敗戦を喫した怪物安清やすきよ慶信けいしん阿蘇品あそじな哲郎てつろうを擁する熊本の英成えいせい高校を相手に被安打六の無失点完封とリベンジ、福岡南の大森投手は、春夏連覇を狙う横綱、最強世代とも称された大阪おおさか誠翔せいしょう高校を相手に被安打がわずか四の三失点完投と、どちらも圧巻の投球を披露してくれています。西村さんはここまでの両投手の投球、どうご覧になっていましたか?』

『いや、素晴らしいの一言ですよ。今日はどちらの打線も、少ないチャンスをものにしなければならないでしょうね』

『ありがとうございます。さあ、それではいま、球審の試合開始の合図がかかりました。

 甲子園準々決勝第二試合、西日本国際大学付属対福岡南、プレーボールです!』

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空っぽの迷子 森高実 @moritaka_minoru

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