再会

アルスは祖父であるターナ侯爵の手を引っ張って教育庁を出た。

そしてサーナス家の馬車に一緒に乗り込んだ。


「アルスよ、突然訪問するのはあまりよろしくないと思うのだが…」


ターナ侯爵の表情は不安気だ。

ルナにどんな反応をされるのか受け入れてもらえるか怖いのだろう。


「おじい様、きっと大丈夫です!僕もついてますから!」


「…そうだな、せっかくアルスが機会を作ってくれた。行くとしよう…」


ターナ侯爵は覚悟を決めたようだ。屋敷までの道中、アルスはルナの様子などを息子目線でターナ侯爵に話してあげた。

ターナ侯爵は頷きながら話を聞いていた。

この10数年間ルナのことを思っていた証拠だ。


話し込んでいると気づけばサーナス家の屋敷へと到着した。馬車からおりるとセシルが出迎えてくれた。


「アルス様、お帰りなさいませ。今日もお疲れ…えっ!ターナ侯爵様!一体どうされたのですか!?」


セシルはアルスと一緒にいるターナ侯爵をみて驚く。


「急にお邪魔して申し訳ない。サーナス夫人に会いに参った。」


「奥様に!至急取り次ぎを…」


セシルは急いでルナを呼びに向かおうとした。

だが、アルスが急いで呼び止める。


「セシル待って!母様には何も言わずに応接室に連れてきてくれるかな?」


「…アルス様、奥様とターナ侯爵のことを思ってのお考えですね…」


「うん、頼むよ。ではおじい様、応接室へ」


「うむ」


アルスはターナ侯爵を応接室へ、セシルはルナを呼びに行った。


――――――――――――――――――――――――

アルスは応接室へターナ侯爵を通した。


「おじい様、いよいよ対面できますね。」

アルスは笑顔で話す。


「そうだな…いよいよ会えるが、許してもらえるか正直今でも不安だよ」


ターナ侯爵はまだ少し不安そうだ。

そこでアルスはターナ侯爵の隣に座り、手を握りしめる。


「おじい様、自信を持ってください。母様に会ったら素直に気持ちを伝えてください。それだけで気持ちは伝わると思います。」


アルスがそういうとターナ侯爵の目が変わった。

緊張が解けたのだろう。


「孫にそこまで言われてやらない訳にはいかないな。ありがとう。」


ターナ侯爵がそう言うとドアがノックされる。

するとルナが入ってきた。


「アルス!セシルから用があるって聞いたけど、一体……えっ!お父様……」


「ルナ…久しぶりだな…」


10数年ぶりに親子が対面した瞬間であった。


「一体どうしてお父様が…」


「僕が招待しました!」


「えっ!アルスが!」


ルナは驚く。


「おじい様、母様に気持ちを伝えてください。」


アルスはターナ侯爵に気持ちを伝えるように言った。


「うむ、アルスありがとう。…ルナ、久しぶりに会えてほんとに嬉しい。あの時、お前の気持ちを無視して話を進めようとしたりしてお前を傷つけた…この10数年間お前のことを片時も忘れたことはない。本当に申し訳なかった。今日はアルスのおかげでこうして会うことができた。立派な息子を持ったな。」


ターナ侯爵はルナに父親として謝罪する。

ターナ侯爵の目には涙も浮かんでいた。


「お父様、私も会えてほんとに嬉しいです。家を飛び出してほんとに心配をかけたし、アルスが生まれた時も報告に行けなかった。お父様の言うことを聞かなかった私を嫌っていると思って怖くて行けなかったの。でも、今日お父様はこうして私の元へ来てくれました。ほんとは私から行くべきなのに…私こそ謝るべきなのです。本当にごめんなさい…」


ルナも涙を流しながらターナ侯爵に気持ちを伝えた。

そしてターナ侯爵はルナをそっと抱きしめた。


そこには親子の時間が流れている。

その様子を見たアルスはそっと応接室を後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る