祖父の存在

イーナの報告によれば、各拠点に1000人近い列ができているという。

アルスは急いで執務室から外務省に設置された拠点の様子を見る。


「なんて人だ…」


「アルス大臣、それだけ注目を集めているということです。外務省の職員も並んでいるとか…」


イーナは少し呆れた顔で話す。


「まぁ、しばらくすれば配備台数も増えるし、落ち着くでしょう…」


「だと良いですが…」


アルスはイーナの心配を他所に席に着く。


「そういえば、決裁が降りた鉄道計画はどうなったかな?」


アルスは話を変える。

鉄道計画は商務庁の管轄であり、補佐官のイーナに一任をしていた。


「着々と進んでいます。先に建設が始まったノスタ線は線路の敷設作業があとひと月で終わる予定、残りの2路線は終着駅の選定を行っているところです。」


「やっぱり残りの2路線はなかなか決まらないよね…」


「ですね。鉄道の力は国中に広がりましたからね。」


「わかった。引き継ぎ頼むね。」


「はい、分かりました。お任せ下さい!」


イーナは力強く応えた。

その様子を見るとアルスも安心する。

そして次の話題になる。


「そういえば、教育大臣がアルス大臣と会いたいと通達がありました。」


「教育大臣ですか…教育大臣って誰が務めてるんだっけ?そういえば会ったことないな」


「えっ!ご存知ないのですか!?」


「えっ、そんなに驚くこと!?」


アルスはイーナの驚きようにびっくりする。


「教育大臣はリッツ・フォン・ターナ侯爵。アルス大臣の母方のおじい様ですよ!」


「…おじい様、おじい様!!」


アルスはとても驚いた。

なぜなら今までそのような話を聞いたことがなかったからである。サノスもルナもそのような話を今まで1度もしなかった。


「まさかご存知ないとは…」


「今まで1度も聞いたことないよ!…そんなおじい様が僕に用があるってこと?」


「そうなりますね。」


イーナは冷静にいう。


「とりあえず、今日の夕方頃時間が空いているという事でしたので伺いましょう。」


「えっ、なんか緊張する…」


「大丈夫です。では、それまでこちらの書類に決済印をお願い致します。」


アルスは大量の未決裁書類を渡されたのであった。

――――――――――――――――――――――――


そして夕方となった。

外務庁の外に出るといまだにシェアサイクルには列ができていた。あまりの人気ぶりにアルスは改めて驚く。


アルスは歩いて教育庁に向かう。

教育庁は外務庁から歩いて5分ほどの距離にある。

教育庁はレンガ造りのとても暖かみのある建物である。建物も10階建てで横に大きい庁舎だ。

アルスは受付に行き、教育大臣との面会を申し出る。

イーナの方で先に色々と話をしてくれていたようで、すぐに大臣室へと案内をしてくれた。


そしてアルスは大臣室へと入った。

そこには白髪のとても優しそうな男性が待っていた。


「待っていたよ。アルス大臣、いや我が孫アルスよ。」

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