シェアサイクル
ナットに自転車の作り方を教え、3日が経った。
アルスはナットの工房を訪ねる。
ナットは作業中で、工房内には金属音が鳴り響いていた。とても集中しているのかアルスが来ていることに気づかない。
そんなナットに話しかける。
「ナットさん!きたよ!」
「えっ、わっ!」
ナットは驚いたようで大きな声を上げた。
「アルス大臣閣下、いらっしゃってたとは…」
ナットは申し訳なさそうにする。
「ナットさん、とても集中してましたね。ところで魔道自転車は完成しましたか?」
アルスはナットに尋ねる。
「はい、無事完成しました!今は最終仕上げに入っているところです。」
ナットはそういうと魔道自転車を披露してくれた。
魔道自転車は一見普通の前世で見た電動自転車のような見た目をしていた。
「ナットさん!素晴らしいです!早速乗ってみてもいいですか?」
「えぇ大丈夫ですよ。」
ナットの承諾を得て、アルスは早速乗るため工房の外に出た。
乗ってみた感想は完全な電動自転車であった。
違いは魔石の力で動くという点だけだ。
乗った後、アルスはナットに労いの言葉をかける。
「ナットさん、あなたをマリアナ王国に連れてきて本当に良かったです。」
「アルス大臣閣下、ありがたきお言葉です!今後とも精進いたします。」
こうして新たな乗り物、魔道自転車によるシェアサイクルが始まることとなる。
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アルスは工房を後にし、その足でそのまま宰相とノスタ財務大臣の元へ魔道自転車の完成を報告した。双方とても喜んでおり、シェアサイクルを導入することにも賛成してくれた。また財務省は魔道自転車を量産するために補助金をナットの工房に出すほどであった。
そんなこんなでふた月ほどが経った。
いよいよ、シェアサイクルが王都サルサで導入される。
サルサの街に50の貸出・返却拠点を設置し、各拠点に10台ずつ魔道自転車を配備した。
今後の需要を見つつ、配備台数は増やす予定である。
アルスはこの日外務省の執務室で仕事をこなしていた。
シェアサイクル導入の日ではあるがこの日に限って公務を優先しなければならなかった。本来であれば、街中を魔道自転車が走る光景を目にしたかった。
アルスはとても残念がっていると補佐官であるイーナが執務室にすごい勢いで入ってきた。
「アルス大臣、またとんでもないことをしましたね!」
「えっ、なんかあった!?」
「各拠点に大勢の人が列をなしているそうよ!」
「一体どれくらい!?」
「各拠点に1000人は…」
とてつもない反響であった。
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