依頼と提案

新皇帝のハルナの相談は自身の功績作りであった。

話によると、即位式を1週間後に行い、それをもって国民への新皇帝即位の通達とするという。


しかし、リース帝国の貴族たちはハルナの手腕に疑問を持っているという。

そもそもの発端は前皇帝の早すぎる死にあった。

実は前皇帝にはハルナしか子供がいなかった。

当然直ぐにハルナを新皇帝に即位させようという動きがあったという。

しかし、多くの貴族たちはそれに反対し、しばらくの間はダット宰相が国政を代行していたという。


しかし、これ以上隠すこともできないと考えたダット宰相はハルナの新皇帝即位をなんとか押し通し、現在に至るという。


「なるほど、そのような経緯があったのですね。」


アルスは今回の背景に納得した。


「アルス大臣、なかなか時間が無いのは承知しています。ですが私はあなたにかけています。」


「えっ、どうしてですか?」


「アルス大臣の功績はこのリース帝国まだ届いていますから!」


「えっ!」


ハルナの言葉にアルスは驚いた。

ハルナの話によれば、大規模な治水事業を成功させ、新たな商業施設の建設、汚職事件の解決などアルスの功績が多くの国民たちの間で話題になっていたという。


「一体どのような功績を?」


アルスはハルナに尋ねる。


「1つこの国が抱えいる問題についてお力をお借りしたいのです。」


「問題ですか…」


どうやらハルナの中でやりたいことは決まっているようだ。


「食料問題です。」


このリース帝国の問題。それは食料問題であった。


話によれば、今年は麦をはじめとする穀物類が不作だという。

早急に対処しなければならなかったが、皇帝不在のリース帝国では宰相が代行してるとはいえ、すぐに動き出すことが出来なかった。なぜなら宰相が自由に権力を使えば反発が起きる。国のトップが不在というのはそういうことである。常に根回しをしなければならない。そのため時間がかかり、他国との調整などが上手くいかなかったという。


「アルス大臣、マリアナ王国のカマという都市は農業都市。あなたが治水事業を行った街。聞くところによるとかなり収穫量も増えていると聞きます。そこで我がリース帝国に麦を始めとする穀物類を優先的に輸出していただけないだろうか?」


ハルナの提案はマリアナ王国からリース帝国へ優先的に輸出して欲しいという内容であった。


「なるほど、優先的な輸出ですか。それは可能です。」


「本当ですか!ありがとうございます。」


ハルナは喜ぶ。


「ですが、それと引き換えにお願いがあります。」


喜ぶハルナにアルスは条件を出した。

交渉は外務大臣として当然のことである。


「穀物輸出の優先権と引替えに、魔法具技術の提供をお願いしたい!」


「なんと!」


アルスの提案はリース帝国最大の強み、魔法。中でも魔法具技術の提供であった。


「皇帝陛下、魔道具の技術提供と言いましても、基礎的なことで大丈夫です。技術をまるまる持っていこうとは考えておりません。」


アルスは少し譲歩した提案をする。

ハルナは深く考える。

リース帝国は魔法先進国としての地位がある。技術を他国に提供すれば台頭してくる可能性も十分にあるのだ。


しかし、功績を残すことが今は重要である。

ハルナの中でアルスを信用出来る人材という考えもある。

そしてハルナは返答する。


「よいでしょう。その提案乗りましょう。」

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