新皇帝

アルスの目の前には大きな扉がある。この扉の先にリース帝国の新皇帝が座す。

マリアナ王国の代表として来ているのだと改めて気持ちを入れ直す。

隣には補佐官のイーナがいるが、とても緊張した面持ちである。


少しして、扉の向こうから声がかかる。


『マリアナ王国代表の方々、中にはいられよ。』


すると目の前にあった大きな扉が開く。


謁見の間は広く、天井も高い。玉座に向かって赤いカーペットが伸びていた。

アルスは玉座の方に目を向ける衝撃を受けた。


玉座に座るのはアルスより少し歳上くらいの女性であった。ピンク色の髪を長く伸ばし、色白でとても美少女だ。


アルス達は玉座の前で進み、片膝をつけ頭を下げた。


「マリアナ王国外務・商務大臣、そして補佐官よ。よく参られた。」


新皇帝は話しかける。


「リース帝国皇帝陛下へのご就任誠におめでとうございます。マリアナ王国外務・商務大臣をしております、アルス・フォン・サーナスです。隣にいますのは補佐官のイーナ・フォン・リータになります。」


アルスが言うと新皇帝も名乗った。


「うむ、遠路はるばるご苦労であった。新皇帝となったハルナ・ナム・リースである。疲れもあるだろうから、今日はゆっくりと休まれよ」


そういうと新皇帝は部屋を出ていき、あっさり謁見は終了した。


_______________________________

あるアルスとイーナは謁見の間から先程までいた応接室へと戻った。



「まさか、新皇帝が女性だったとはね。」


イーナが言う。

確かにアルスも驚いた。

通常、誰が即位するとか事前に通知があるはずだ。

しかし、今回新皇帝が即位したという情報しか入ってこなかったのだ。


アルスは、恐らく、新皇帝がまだ子供であることを隠すためであると考えた。

国トップが子どもだと他国から不安視され、他国からの使者も挨拶に来ない可能性もある。

それを恐れ事前まで隠したのだろう。


「でも、とてもしっかりとした皇帝だと思うよ。」


アルスは新皇帝から何かしらを感じ取っていた。

きっと彼女がリース帝国を引っ張って行くのだと。


そうこうしていると応接室の扉がノックされる。


「アルス大臣、皇帝陛下がお越しです。」


「なんだって!」


突然、新皇帝が訪れたのだった。

アルスは急いで部屋に入るように促す。


扉が開かれ、新皇帝が入って来た。

先程の謁見の時とは違い、服装なども軽装だった。

だが、とても美しい。


「すいません、突然訪れて。」


新皇帝ハルナは一言謝罪する。


「いえいえ、大丈夫です。どうぞおすわり下さい。」


そういうとお互いに席に着く。

そしてハルナが口を開いた。


「突然訪れたのはアルス大臣に相談があり来ました。」


ハルナの話し方も先程の謁見の時とは違い、優しい口調だ。


「相談ですか?」


「はい、私に力を貸して欲しいのです。」


「力を貸して欲しいと言われても、一体何をすれば?」


「功績作りです。」


ハルナの相談は自身の功績作りの相談であった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る