供給
ハルナと交わした穀物輸出。
アルスは直ぐにマリアナ王国に手紙を送った。
宛先は宰相であるリスタだ。
内政面でリスタ宰相に並ぶものはいない。
農林水産大臣に頼むこともできたが、まだ会ったこともなかった。
この際、宰相を通した方が早いとアルスは考えた。
宰相を通した結果直ぐに、リース帝国への穀物の輸出が開始された。
そして現在に至る。
「アルス大臣、本当にありがとう。」
ハルナは国を代表して感謝の気持ちを伝えてきた。
「いえいえ、こちらの提案をのんで頂いてますから、お礼はいりませんよ。」
アルスが言うこちらの提案、それは魔道具の技術提供である。アルスは穀物の優先輸出の代わりに魔道具技術を要求した。
これはマリアナ王国にとってかなり有利な提案だった。
「そうでしたね。穀物も無事に国内に入りましたし、お約束通り、マリアナ王国に我がリース帝国の魔道具の技術を提供しましょう。…どうぞお入りになって、」
ハルナはそういうと応接室に1人の男性が入ってきた。
歳は25歳くらいだろうか。緑色の髪の好青年だ。
「紹介しましょう。我がリース帝国で今年最優秀魔道具賞を受賞した、ナットです。」
ハルナが紹介した。
魔法先進国のリース帝国で行われている魔道具選手権。国内から選りすぐりの魔道具士たちが力作を持ち寄って競い合う大会だ。
アルスが紹介されたのはなんと今年大注目の新人であった。最優秀魔道具賞、つまり今年のチャンピオンだ。
「アルス大臣閣下、ナットと申します。名高きアルス大臣閣下にお目通りが叶い、大変嬉しく思います。」
ナットが挨拶をした。
どうやらナットはアルスのことを知っているらしい。
「ナットさん、初めまして。マリアナ王国で外務・商務大臣を務めております。アルス・フォン・サーナスです。よろしくお願いしますね。ところで、ナットさん。私のことをご存知なのですか?」
アルスは挨拶をし、ナットに尋ねた。
「もちろん!帝国民にもアルス大臣のご活躍ぶりは知れ渡っております。特に、農業都市カマでのご活躍。今回のことも帝国民にすぐに広まります!!」
ナットは興奮気味に答えた。
「ナットさん、ありがとうございます。ですが、私は当然のことをしただけですよ。ありがたいことにナットさんのお力も借りれますし!」
アルスはそう応えると、
「私でよければアルス大臣のため、一生懸命頑張ります!」
ナットは自信満々に言った。
アルスはその様子に笑顔で頷くのだった。
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