品質管理のクオリティ

「不具合の有無」の面から見た製品品質への価値観は、企業・開発者によって異なる。品質は高いほうがいいに決まっている、と思うかもしれない。しかし、それはすべての企業・開発者の共通見解ではない。品質優先が大多数であってほしいと思う。けれども、品質より納期優先、コスト優先思考の人が少なからず存在する。これはまぎれもない事実だ。お客さまの視点からは信じられないかもしれないが、そういった人が企業の存続に寄与する場面もある。

 製品開発において、品質、納期、コストの関係は無視できない。品質を優先させたくても、いつかは納期がくる。納期を守らなければ利益が出ず、次の製品開発にコストがかけられない。コストをかけすぎれば、品質がよくても開発にかけた費用を取り戻せない。それぞれバランスが重要だ。

 たとえ無限の期間、無限の資金があっても、ケアレスミスもヒューマンエラーもなくなりはしない。モノづくりへの意識が高い人もいれば、そうでない人もいる。ひと筋縄ではいかない。

 しかし、人々の生活の一部となりうる製品を作るのなら、目指す品質はいつだって高くあってほしい。発想が足りない、知識や技術が足りない、資金が心もとない、こころざしや野望を持っていない、製品開発の現場には「ない」ことだらけである。それでも、誰かの人生 (自分の人生でも構わない) を豊かにするための何かを生み出したい、作らずにはいられない、確かな品質で世に送り出したい、そんな想いを胸に秘め奮闘している人が必ずいる。

 考えてみてほしい。『品質はこのくらいでいいや』と放り出されてしまった製品が、はたして誰かをしあわせにするだろうか。そうして生み出されたものに、よろこんでお金と限りある時間を消費できるだろうか。できる人はいるにはいる。同時に、できない人もまた、確かにいる。

 製品のクオリティが高くなるか低くなるかは、開発に携わるすべての人の手にかかっている。インタビューで誌面を飾るエグゼクティブだけが握っているのではない。見向きもされない末端の席にいても、そこでする仕事が製品のクオリティを支えているのだ。

 品質管理に身を置くのであれば、常に高みを目指してほしい。声をあげても、決定権を持つ人まで届かない場面はよくある。だからといって、どうか腐らないでほしい。腐らずにやり遂げた仕事は、かなうのなら製品に反映されてもらいたい。しかし、かなわなかったとしても、確かに残るものがある。それは、あなたの人格と行動のすべてに、高いクオリティをもたらすだろう。

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