身体機能は誰しも同じではない

 あなたは、自分の身体機能に不自由はないだろうか。利き手は右、それとも左のどちらだろうか。手足は自在に動き、視力はよく、色の見分けがつき、聞こえもよいだろうか。それらに問題や苦労を抱えていないようであれば何よりだ。しかし、それには「今は」と条件がつくかもしれない。もしかすると、そう遠くない将来、自分の体にこんなことが起こるとしたら、と想像してみてほしい。


 ・物をつかんで持つのに苦労するようになった。

 ・書かれている文字がよく見えなくなった。

 ・赤、緑、青の色の違いが見分けられなくなった。

 ・しゃべっている声がよく聞き取れなくなった。

 ・利き手を変える必要に迫られた。

 ・声が出せなくなった。

 ・足腰が言うことをきかなくなった。


 これらはすべて、身体機能に深いかかわりをもっている。世界に生きる人々の誰しもが同じではない。理由や原因は、きっとさまざまあるだろう。生まれつきであったり、老いによるものであったり、事件事故であったり。やりたいことをやりたいようにできる人がいる一方で、やりたいと望んでもやれない人もいるのが現実だ。ひょっとしたら明日のあなたが、なにかひとつ自由を失う可能性だって十分にあり得る。不自由な生活とは、映像の中だけで繰り広げられる出来事ではないのだ。

 製品の品質を管理する、というのは、「製品を使う人を想う」ということでもある。誰かを想うとき、身体的になんの不自由もない自分を基準にはできない。自由を失った、もしくは失いつつある人が、自らが手がける製品にふれているシーンをはっきりとイメージする必要がある。『こんな人がいるかもしれない』と想像できたのなら、その人は現実世界に必ず存在する。その人の存在を知覚したあとは、行動を起こすのみだ。

 製品の機能が多様になってあなたの生活を便利にする。すぐれた娯楽性があなたに楽しいひとときを提供する。それを、身体機能にかかわらず、分け隔てなく大勢の人へ届けるために、品質管理にもできることがある。当然と思っていることが当然であるうちに、それに気づいてほしい。

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