……………9-(8)

 チャプンと水の音を聞きながら、深沢の胸の上に頬を乗せて、湯船に浸かっている。会場を後にして、皆で鷹東のお店に行き、お腹一杯食べて、宴会に突入して、やっと皆帰っていった。先程まで、和真と小春はこの家の一階で何か話をしていたようだが、帰って行った。

「もっとごねて居るかと思った」

 なつめは意外にもあっさりと帰っていった小春に、深沢は吹き出して笑った。

「随分、気に入ってみて回っていたな…」

 二階を見ようとした小春を引きずり下ろすのに、なつめは大変な目に合った。

「もう本当に! 泊まるかと思った」

「俺もだ…」

 仕方なさそうな呟きに、なつめは深沢の顔を見た。

「今日はさ、父さんに会った気がする」

 深沢は天井を見上げると、

「俺も…会ったな。肩を叩かれたよ」

「そうなんだ」

 二人でゆっくり思い出しては、笑みを浮かべた。

「楽しかったな…」

「あのさ、宗司…」

 言いかけたが、なつめはいい淀んだ。深沢はなんとなく言いたいことが分かって、なつめの唇にキスした。

「…俺も、そろそろ会いに行ってみるか?」

「あ、俺も行きたい!」

「どうしようかな…」

「汀子さんに俺も会いたい」

 深沢の妹である汀子にも、今回の誕生日会の案内は送っていた。深沢は開いた席を見つめて、なんか用があったのかもしれないって、自分を納得させていたが、

「今更、あいつも大人になってるだろうし、喧嘩腰で来ないだろう」

「でも、宗司の側にいたい…」

「………」

 深沢が傷付いた時、側にいたい。その思いは深沢に伝わってくる。

「分かった」

「……うん。良かった」

「さてと、そろそろ出るか?」

 なつめの体を抱き上げて立たせる。時間を見ると、どうやら一時間近く湯船に浸かっていたみたいだ。体を拭き、ベッドに横になると、何度もキスをする。

「あっ、…うん」

「ほらっ、もっと…」

 深いキスをしながら、熱くなった体に触れていく。なつめの口から零れた唾液を舐めながら、プッと吹き出した。

「え? なんで笑うんだよ」

「いや、お前。この前、俺の胸に吸い付くようにして寝ていただろう?」

「あっ! あれは…」

「俺も途中からうとうとしてて、なんか冷たいなぁって思ったら、お前の涎でビショビショになっていた」

「……!」

 なつめは真っ赤になると、申し訳なさそうに唇を嚙んだ。

「まあ、可愛いけどな」

「むう…」

 そっと抱き寄せ、ベッドに押し倒す。シートに沈んだなつめの顔を見つめる。踊っている時の心と体の共鳴は、全てが充実感で満たされる。伸ばした所に、掴む手が存在し、感情の思うままに、愛するべき存在が同じような思いで、そこに立っている。綺麗に化粧された顔で、真っ直ぐに視線を返してくる。その姿が堪らないほど愛しい。

「なつめ、愛してる」

 潤んだ目が見開かれると、涙が溢れ出る。深く唇を合わせ、首筋から胸板を滑り降り、なつめ自身に唇を寄せた。

「あぁ、あぁ、あっんっ…」

 深く含み、先端を強く吸った。

「んんっ、うっ、くうう!」

 弾けた熱を飲み干し、両足を抱え直した。また絡みつくようになつめ自身に舌を這わせ、動いて逃げる腰を更に拘束して愛撫していく。

「もう、やだっ…はあ…」

 緩く擦りながら、オイルにまみれた指を最奥へと含めていく。

「っんん…、あぁ…」

 指を回しながら、どんどんオイルを垂らしていく。

「そんなに入れたら…」

「大丈夫。溢れるだけだ…」

 笑いながら、熱い吐息を吐いて、なつめの体を抱き締めた。耳元で囁かれた言葉に、深沢の頭を軽く叩く。

「もうっ!ほんとに…、あぁああ、あぁ」

「…くう…」

 深くまで腰を進めると、もっと深く交わるかのように抱き寄せる。

「駄目だよ、もう深い…」

「もっともっと奥まで…」

「んっ、深いよ…」

 抱え上げられた足を広げられ、腰が宙に浮き、激しく揺すられる。力が入らなくて、その逞しい胸に触れる。流れる汗と、早い鼓動に奥歯を噛み締めた。

「あぁっ、あああっ…」

 深沢の熱さを感じて、強く締め付ける。その動きを封じることも出来ず、奥深くに感じる熱さに、シーツを引っ張った。

「あんっ…、んっ!」

「クッ!」

 突き上げた最奥に、熱を激しく吐き出した。力尽きているなつめの頬に張り付いている髪を取ってやり、顔中に優しくキスをする。

「宗司…、愛してる」

「ああ…」

 深沢は笑みを浮かべると、そっと体を抱き上げて、腰の上に座らせる。深沢自身を深く飲み込んだまま、甘やかせてくれる腕のなかで、目を閉じた。深沢は枕を二つ抱き寄せると、ゆったりとなつめの肩を抱いたまま、凭れ掛かる。

「こんな状態で、眠れないんだけど…」

「そうだな。眠るつもりは全くないが…」

 なつめの腰を優しく撫で、お尻を触りながら、口許に笑みを浮かべると、腰を突き上げた。

「あっ、あっ、待って…」

 力の入らない足がシーツを滑っていく。

「ほらっ、もっと…」

 小刻みに腰を突き上げられ、物足りなさに耐えきれなくたったなつめが、深沢の胸板に手をついて、体を起こした。

「ああぁ、んんっ…待って」

「待たないって言ってるだろう?」

 なつめの腰を両手で掴むと、激しく突き上げていく。

「あぁ、あぁ、駄目だって…」

「ここがいいだろう?」

「んっ、イイ…、はあ…」

 なつめが耐えるように眉間に皺を寄せると、なつめ自身の先端を指で弄ぶ。最奥が閉まり、更に突き上げを激しくする。

「あぁ、駄目だって…」

 両手で深沢の悪戯する手を押さえながら、最奥を強く締め付け、高みに達してしまった。その様子を、目を細めて堪能していた深沢は深い快楽に、艶のある溜息を吐き出した。

「んんっ、あぁ!」

「あぁ、はぁ…。いいな…」

 ユラッと傾いたなつめの腕を引っ張り、優しく抱き留めると、向きを変え、ベッドに寝かせた。荒い息をしていたなつめの呼吸が規則正しくなり、薄目を開けて、眠気と戦っている。

「ほら、もう寝ていい…」

「んっ、まだ…」

 言いかけて、眠ってしまった。頭を撫でながら、掏り寄ってくる体を抱き締めた。幸せ過ぎて、眠るのが惜しいくらいだ。なつめの顔を見ながら、深沢もやっと目を閉じた。

 当然、次の日昼過ぎに、静流が起こしにきた。



 

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