第39話 交渉② -楓視点-

「継承回数の回復路慰謝料の継承回復の増加はどう考えているのでしょうか?」

「うむ。それは継承回数の回復並びに増加分として1回多くしようと思っている」

「話になりません! ベビー世代が殺されたのですよ! それを1回だけの増加で済まそうなんて何を考えての発言でしょうか?」

「そうは言ってもだな、前例として残るので多すぎる回数は無理だ」

「それでも1回は少なすぎます! せめて1000回は無いと話になりません!」


 皇族の男は驚いて大声を出した。

 

「1000回! それは無茶だ!」

「無茶ではありません。現に皇族並びに大臣級の回数は無制限じゃ無いですか」

「それはそうだが、タロー・コバヤシは一般人だぞ!」

「その一般人の死で帝国が危機状態になっているのは何故ですか?」

「それはタロー・コバヤシが此方の想定を遙かに上回る財産を持っていたからだ」

「ではタロー・コバヤシが死んだ場合にその財産を巡って争いが起きないと言えますか?」

「それは…………言えないが」

「ですので、オーナー……タロー・コバヤシには長く生きていて貰う必要があるのです」

「むう」

「それにタロー・コバヤシが死んでから慰謝料を支払い終わられてもタロー・コバヤシには死んでいるので何の得も無いのです!」

「確かに、それはそうだが…………」

「それとも、タロー・コバヤシが存命の内に……そうですね10年以内に慰謝料を支払い終えてくれるというなら話は別ですが?」

「それは無理だ!」

「ではタロー・コバヤシに長生きをして貰う必要があります。それには最低でも1000回増やして貰わないと暗殺の恐れのあるので継承が足らなくなります」

「むぅぅ」

「それにこれは帝国の為にも言っているのです。タロー・コバヤシが外宇宙地域探索で広大な領土を開発した場合、回数制限のある帝国にそのまま在籍すると思いますか? その場合に継承回数が1000回も無ければ私共は無制限になる独立をタロー・コバヤシに勧めることになります」

「むぅぅぅぅぅ」

「どういたしますか?」

「分かった。1000回で手を打とう」


 皇族の男はうなだれてそう言った。

 

「ご英断、誠に喜ばしい限りで御座います」

「皮肉か?」

「本気ですが?」

「それで次の要望は何だ?」

「インフラ関係の人員の技術と経験の詰まったデータを出来るだけ多く欲しいです」

「それはブレインスキャナーを使ったデータと言うことか?」

「はい。そうなります。都市計画など立てた方で上手く言ってる方の経験や知識は是非欲しいですね」

「それは幾ら出す?」

「市場価格にもよりますが、市場価格なら使い回しが永遠に使い回しが出来て一般の大工として働いている人だったら5年の経験と知識で30万エネル前後ですね。20年以上大工として働いて親方の経験を持って大工の腕が良く指揮も上手な方で50万エネルです。高級大工でもそれに+10万エネル上がりますね。とにかく市場価格での購入になります。市場に出回っていない方達の経験や知識は別ですが」

「そんな市場があるのだな」

「アンドロイドやバイオロイドのスキル獲得の為の市場ですから」

「成る程」

「他にはインフラや自力で航行できるワープ装置を兼ね備えたゲートや武器開発の人員や宇宙船開発の人員やとにかく開発関係の人員ですね。ただし、スパイ防止の為に定期的にブレインスキャナーを受けてもらえる方に限りますけど」

「他は?」

「後は外宇宙地域探索で開発が順調に進めば移民の募集等ですね。これもスパイ防止でブレインスキャナーに受けてもらう事が必須ですが……やっていけば色々と不便なことがあると思うので、その全面バックアップですね」

「他には?」

「もし開発した地域が独立する事になった時の不戦条約……攻めてこない条約と防衛できた場合は任務達成と此方が判断した場合に早くに本国に帰ってもらう事等もありますね。 これらは帝王の正式な玉璽で発行して頂かないと意味が無いですね」

「成る程」

「それと独立する時に皇や帝の使用を認めるとかかな?」

「それは……まぁ、難しいが何とかなるかもしれんな」

「最大の要望はオーナー……タロー・コバヤシを含む私達の身の安全の保証ですね」

「それは帝国国民であれば当然の要求だな」

「後は怨霊弾の所持の許可だね」

「それは無理だ! そもそも開発自体が出来ないだろう?」

「お忘れですか?私達は開発後開発途中の物も全て見て特許なども使用することが出来るという条文がある事を。当然一番最初に怨霊弾の作り方と注意点や改良点などは調べさせて頂いて複数のバックアップを持っています」

「あ~! そんな所に落とし穴があったなんて! て事は認めずとも作れてしまうと言うことじゃないか!」


 皇族の男は立ち上がって嘆いた。

 

「そうですね」

「認めるしかない状況じゃ無いか! あのあほ皇族と軍め!」


 隣の席の軍務大臣が大量の汗をかき、真っ青になっている。

 

「今の所はこれくらいで後から徐々に増えていくと思います」


 皇族の男は座ってうなだれて言った。

 

「そうだろうな」

「あ! それと慰謝料は現時点の通貨の価値で換算して下さいね」

「…………わかった」

「それで、そちらからの要望はありますか?」

「利子を無くして欲しいが…………只では無理なんだろうな。そこで捕まった侯爵領との交換では無理かな?」

「無理ですね。年間の利子の十分の一にも達していない侯爵領を貰っても益がありませんし、将来独立国家になるとしたら邪魔になるだけです」

「そこを何とか出来ないか?」

「無茶を言われては困ります。それって今回の慰謝料でこの国の国民も含めた全てを譲れと言われて譲りますか? 言ってることはほとんど同じですよ?」

「無理だな」

「そういう事です」

「だが、それでは国家が破綻してしまうのだ!」

「そう言われてもですね、此方も困りますよ」

「それでは、そなた達が当てた外宇宙地域探索での開発を国家全体で推進し手を貸そう。それと、スパイ網の形成や人材の紹介・育成の手伝いやノウハウの提供等に先程の侯爵家を整理して其方の国境と接するようにしよう。勿論、国家独立の際は侯爵領も独立国家に属するとさせて貰う。独立も助けようじゃ無いか。その際に我が国及び他の国に侵略はさせないと誓っておこう。怨霊弾も何発か渡そう。国の協議には常にそちら側に経つように心がけよう。よっぽどでない限りはだが。それでどうかな?」

「う~ん、それだと不確定要素が多くて良くて三分の一、何か借りがある場合なら余程大甘に甘く見て良くて三分の二の免責ですが、恨みはあっても借りは無いですからねぇですからね。それに国家全体で推進されてこちらの地図を作られても困りますし」

「では、今までの条件にプラスして派遣される物には派遣期間の間の記憶消去処置を義務づけよう。勿論、派遣する物には宇宙ネットのアクセスは物理的に出来ないようにしよう。派遣が終わったらそちらで記憶消去して貰い、医療機関でブレインスキャナーで記憶を消したか確認して貰おう。そちらの医療機関で何か体内に隠し持っていないか調べて、行きと帰ってくる時は裸での送迎で宇宙船に入れて貰おう。服は此方でどうにかするので、行きの時は服を検査機のスキャナーや繊維検査等色々と調べて貰って大丈夫だ。アクセサリーの類いは一切付けないことにしよう。それで三分の一は確定にならないか?」

「そうですね。そこまでしてくれる+色々と便宜を図ってくれるというのでしたら毎年の利子6%の内の利子の三分の一は帳消しにしても良いですね。ただ、次の条件が絶対ですが。ブレインスキャナーで記憶を取る前に消されると事故や災害があった時の復旧に困るのでこちらでブレインスキャナーでの経験と記憶の吸い出しも義務づけて欲しいですね」

「わかった。そうしよう」

「利子の三分の一の免責にしかならなかったですが、大丈夫ですか?」

「三分の一免責されれば最悪利子だけでも払っていけば国家運営できるので大丈夫だ」

「それは大丈夫と言わないと思いますけど?」

「……大丈夫、…………大丈夫!」

「自己暗示かけてますね。それに今上帝こんじょうていじゃ無いと決められない事を決めたって事で誰だか分かってしまいましたし……この国、大丈夫なのかな?」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

次回は話は太郎の視点の話だよ。

オーガ退治を依頼されて、交渉の末に決裂したんだけど桃子が勝手に受けちゃう話だよ。

次回、桃子の暴走です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る