第38話 交渉① -楓視点-

 判決が決まってから、軍から減額のお願いに何度も足を運んでいる者達がいる。

 しかしながら”減額のお願い”では話にならないので帰って貰っている。

 そうすると、暫くしてから軍から派遣されてきた人が交渉したいと言ってきた。

 交渉なら話し合う余地はあるので向かい入れた。


「交渉したいと言う事ですが、どのような交渉でしょうか? 減額の交渉なら受け付けませんが?」

「何か軍に対して必要な事とかありませんか? 特権とか特別な待遇とか?」

「ある事にはありますが、大幅に減額できるようなものではないですよ」

「あるなら何でも言って下さい!」

「それでは、宇宙船キャノンボールでの商品には”軍の開発品や開発途中の品に全装備、宇宙船も含む全兵器を特許も含め使用できる”とありますがこれって独自開発や兵器会社の設立を暗に認めてるようです。ですが、今回、私共に対しては公然とこれを認めて頂きたいのです」

「……こ、公然とですか。それはちょっと難しいかも知れません」

「何故ですか、暗に認めている物を公然化するだけですよ?」

「それはそうなんですが……他の兵器会社との兼ね合いも御座いまして」

「そんな事言っていたら何も前に進まないじゃ無いですか!」

「そうは言われましても、私の権限を越えていまして…………」

「だったら、もっと上の話し合いになる権限を持った人を連れてきなさい!」

「分かりました! それでは失礼します!」

 

 そう言った事が3度繰り返されて、帝王宛に嘆願の振りをした”このままだと周辺諸国に今回の賠償金を小分けにしてオークションにかける”と言った手紙を出した。

 すぐに皇族が乗り込んでくる事態になった。

 軍の高官は顔色が真っ青になっている。

 こうして新しい交渉の場が設けられたのだった。


「それではこれから協議を始める。私の事は名前は伏せさせてもらう。調停者として皇族から来た者と覚えて貰えればそれで良い。それではまずは両者の言い分を聞こう」


 顔を薄い布で覆って隠した人物がそう言った。

 

「私達の言い分は宇宙船キャノンボールでの商品には”軍の開発品や開発途中の品に全装備、宇宙船も含む全兵器を特許も含め使用できる”とありますがこれって独自開発や兵器会社の設立を暗に認めてるようですが、今回、私共に対しては公然とこれを認めて頂きたいとまずは簡単な事からスタートさせました」

「それに対して軍の意見は?」

「…………公然と認めるのは他の兵器会社との兼ね合いもあり難しいと」

「それだけで無く権限が無いのでと3回も来ては帰られました」

「ほう」

「私達は何も只で認めろと入っていません。10億エネル支払うと言っています。暗黙の了解から公然にするだけで10億です」

「それでも軍の方針は変わらないと?」

「そうですね。権限が無いのでと逃げ帰っていきます」

「だそうだが、軍の見解は?」

「金の問題じゃ無いのです。公然と認めてしまえば他の兵器会社の経営を圧迫しかねない問題でもあり、公然とは難しいと」

「暗黙の了解でも圧迫するのは変わりないでは無いですか。何故公然とするのが駄目なのか理解に苦しみます」

「確かに暗黙の了解でも圧迫するのには変わりは無いな。その点はどうなんだ?」

「え~、それについては協議中でして……」

「確かに話にならんな。調停者として10億エネルでの公然かを認めるよう軍に勧告する。これを退けたいなら具体的な根拠を述べよ」

「え~、その、あの」

「無いようなので決定とする」

「あの! 軍の担当を軍務大臣に変更願いたいがよろしいでしょうか?」

「私達は構いません」

「相手が了承しているのだから構わない。早急に交代すべきだ。直ちに連れてくるように」

「はい!」

 

 1時間程時間が空きそうなので皇族の人と話をする事にする。

 

「調停者様、このまま行くと軍全てを差し出しても莫大な借金が国に残りますが、その当たりどう考えてらっしゃるのでしょうか?」

「そうだな、何とか利子は無くして貰いたいと考えている。今回はある意味帝国史上最大の危機と考えている」

「利子を亡くすのに何を差し出すおつもりですか?莫大な利子に相当する物など無いと思うのですが」

「だから困っている」

「困ってる振りをしているだけで秘策があるようですが?」

「ふむ。…………それは秘密としておこう」

 

 それから暫く時間が経って、軍務大臣が到着した。


「恐れ入ります。軍務大臣をしております。名は暗殺があるので控えること申し訳ありませんがご了承下さい」

「うむ。それでは協議に戻ろう。軍務大臣、軍が相手に渡せる物や特権、権利などは何か無いのか?」

「…………それが、思い付きませんで」

「………………思い付かないか」

「はい。暗黙の了解を公にするというのはもう決まってしまいましたし。軍の開発情報などは既に相手に見える状況ですし、格安で武器を卸すと言っても負債の方が多い上に信用を損ねていますので難しいかと」

「確かにな。そうすると後は国からどうするかと言った話になるか」

「国からなら色々と要望が御座います」

「そりゃそうだろうな」

「まず、今回消費されたタロー・コバヤシの継承回数の回復並びに慰謝料としての継承回数の増加の話です」


 行き成り爆弾を落とされた。

 


―――――――――――――――――――――――――――――

次回は話も楓視点の話だよ。

帝国と慰謝料での話し合いの続きをするみたい。

次回、交渉② -楓視点-です。

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