第40話 桃子の暴走

 あれから数年経って、桃子も12歳になった。

 年相応の少女に育っている。

 ただ、山彦とあやめが甘やかした所為なのか多少わがままだ。

 例えば、自分が正しいと思えば間違っていても頑として譲らずに貫き通そうとして山彦かあやめに叱られると泣く。

 結局決着は付かないまま放って置かれる。

 これが小さな事なら放っておいても良いが、大きな事までこれだと困る。

 それで俺が裁決を下す羽目になり、山彦とあやめと桃子に注意する事になる。

 これがパターン化してきている。

 正直、うんざりだ。

 かと言って見捨てるには情が湧きすぎている。

 …………しばらくは現状維持のままか。


 村の現状はスパイダーシルクは村の皆でも作れるように木製と金属を合わせた紡績機を作って糸を作り上げている。

 設計図を引いたのは輸送船トランスだが、作ったのは村の木工職人と鍛冶屋だ。

 布は機織り機を何台か作って村の皆が神社で一括生産出来るようにしている。

 これも作ったのは村の木工職人と鍛冶屋だ。

 俺の像要るとのことで育成カプセルに言って適当な間伐材で掘らせた。

 勿論、この神社に使われたのと同じ処理はしている。

 何故か非常に良く似ているのが憎かった。

 その像は神社の本尊として祭られている。


 地力発電は人の手で手入れできる所は手入れできるように桃教の信者には教えてある。

 

 この星特有のナノマシンで超能力みたいな現象が起こる事だが、一旦、宇宙船トランスに転送で戻って試してみたら宇宙でも使用できた。

 超能力の一種だと思う事にしている。

 その能力だが、1年前にあやめと魔術の師匠からもう教えることは無いと言われている。

 力の大きさもこの星特有のナノマシンを直に打ち続けた所為か当初の0から1000億倍に膨れ上がっている。

 それに伴ってアストラル体も同じように強化されている。


 

「兄さま、時々打っている液体は何ですか?」

「呪術を高めるための薬だ」

「え〜、それ桃子も打ちたい」

「小桃も〜」

「次郎も〜」

「痛いが我慢できるのか?」

「何とか我慢する」

「小桃も〜」

「次郎も〜」

「それじゃ、順番に打っていくから、そこに一列に並べ」

「「「は~い」」」

 そうして順に打っていった。

 幸い副作用などはなく、呪術の力が何日か後に上がっているのが分かった。

 桃子はもういいとの事だが、次郎と小桃はまた打って欲しいと言っている。

 結局、2人に後2回打って終わりにした。


 そんな日々の最中、他の村からオーガが暴れてあるので何とかして欲しいと言う要請があったが、その村から退治の人員を出すのは嫌だと言ったり食料や土地を譲るのも嫌だと言う具合で話にならないので断った。

 そうすると桃子が可哀想じゃ無い助けてあげようよと言ってきたが、自ら動かず対価を差し出すつもりもない村とは付き合えない。

 良い様に使わられるだけだと諭したが、持ち前の正しいと思ったら間違っていても突き進む性格で勝手に引き受けて一人で退治に出かけた。


 あやめや山彦に懇願されて渋々助けに行くことになったが、これからの付き合いは考えさせてもらうと言った。

 そうして桃子を追って偵察機に探させて道中を行くと桃子が小鬼ゴブリンの集団に遭遇して奮闘虚しく捕まったとの報告を受けた。

 場所を聞き、急いでその場所に向かった。


 ゴブリンの住処は洞窟の中だった。

 どうやらオーガとは関係のない勢力らしかった。

 見敵必殺けんてきひっさつのごとく会う敵を一撃で殺していく。

 そして、桃子のいる部屋が見つかった。

 桃子はあと少しで殺されて食料にされる所だった。

 下からは小を漏らしていた。

 取り敢えず全部の敵を殺して桃子を助けたが、解体所にある水で漏らした所を洗う様に言った。

 下を洗い、服を着てマシになった桃子にこれはオーガの配下ではなく野良の小鬼ゴブリンだと言い、一人でこれ以上の敵と戦いにいくんだろと言った。

 桃子は消沈して言った。


「無理です。兄さまごめんなさい!」

「それなら、この仕事は諦めるんだな?」

「はい」

「自分にできない事を引き受けるんじゃない!」

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

「取り敢えず、引き受けた村に無理でしたと言いにいくぞ」

「はい」


 そうして、引き受けた村に行き、失敗した事を報告した。

 それと、今回のことは桃子1人が受けたもので桃教は関係ないことも話した。

 そうすると相手方は怒り、話が違うと言ってきた。


「桃教は巫女の言った事をやぶるのか!」

「桃子は桃教の巫女ではない。そもそも巫女という役職がない!」


 と反論すると、"詐欺だ""騙してるんだ"とうるさい。

 それならと勝ちきそうな子供に言った。


「この村のものは皆乞食なのか? オーガ退治しても何のお返しもしないのは乞食以下か?」


 そう言うと乗ってきて言った。


「俺の村は乞食じゃない! オーガ退治をしたら食糧でも土地でも返礼として渡してやるわ!」

「ほう、二言はないな?」

「ああ」


 村の大人は止めようとしていたが、それよりも早く子供が言ってしまった。

 村の大人は子供の言う事だからと言うので、此方も言った。


「ならば、此方も言わせて貰うが子供の言う事で巫女でない者を勝手に勘違いして文句を言うのは筋違いであろう!

 オーガ退治するというならそれなりの礼を出すべきだ! さもないとそこの坊主の言った事を村の総意と受け取るぞ!」


 そうすると、村のもの達は黙ってしまった。

 


―――――――――――――――――――――――――――――

次回は話は結局オーガ退治を依頼下村が礼を支払うことで決着が付いた話だよ。

次回、鬼退治に行く事になりましたです。

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