第8話 でたらめな世界
日暮れまでに洞窟を発見できたのは、僥倖としか言えないだろう。
大人三人が、立ったまま余裕で入れるほどの高さと幅。
ぱっと見る限りでは、獣の巣穴ではなさそうだが、はたして中はどうなっているのか。
枯れ枝を道案内代わりに、細心の注意を怠らずに
まもなく、枝が横の壁に触れたかと思うと、とたんに赤黒い触手が天井から伸びて来て、それを絡めとると、素早く中空へと持ちあげていた。
不意を衝かれたとはいえ、触手の腕力は、
「……中に入るのは、よしたほうがいいかもしれないな」
呆れたように
続けた言葉は、単純な独り言で、他人の返事を期待したものではなかったのだろう。
「改めて、ここがでたらめな世界なんだと、思い知らされた気分だよ」
とても満足と呼べる代物ではないが、ひとまずシェルターの確保には成功した。
一応は身の安全が保証されたのだ。次に必要になるのは、火だろうか。
しかして、
空気が乾燥していれば、まだやりようもあっただろう。少々の砂を混ぜることで摩擦力を上げ、発火しやすくさせられるからだ。
だが、あいにくとそのような環境にはいない。
「クソっ……。国も真面目に調査させる気なら、せめてファイヤースターターくらい用意しとけよ……」
ダッフルバッグの中身を、見たからこその発言だろうか。
結局、火の確保は諦めざるをえなかった。
やがて、日が落ちて辺りが闇に染まると、洞窟の奥で瞬く小さな光の存在に気がつく。
もちろん、そうかと言って、入って確かめようなぞという気は、間違っても起こらなかった。
だが、あの光が周囲の虫を惹きつけてくれているのか、幸いにして、
いつ
この暗闇の中で、早期に発見することはかなうのか。
そして、いざ対峙する羽目になった時、自分たちだけで対処することはできるのか。
さまざまな不安に怯えながら、
※
眠い。
当然のように、熟睡することなぞできるはずもなかった。
睡眠は俄然不足している。
状況は何も好転していなかったが、一つだけ希望はあると、
「紫色の靄も、もう離れたかもしれない。俺は一度、現場に戻ろうと思う。今のままじゃ、手持ちの不安が拭えない」
靄は移動するのだ。仮に、
「そんなこと言って、私を置いていくつもりでしょう!」
そうではない。
不測の事態に備えるためだと、
仕方なく、
「冗談でしょう!? 私を平気で置き去りにするような人と、二人っきりにしようっていう訳? 馬鹿なことはやめて!
歩きだす背中に追い打ちをかけることも、
「ちょっと、何やっているの!? あなたは来た道を戻るだけなんだから、武器なんか要らないじゃない。置いていきなさいよ!」
ぶっきらぼうに、
何も言えず、
こうなることを
後味の悪さだけが、
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