第6話 孤立する第⑤班
自分たちはダッフルバッグから、いったいどれだけの武具を持って来られたのか。それを確認したい。
だが、その前に問わねばならぬことがあるだろうと、
「何を考えているんだ、お前! みんなを危険に晒す気か!」
胸倉に他人の手があっても、
「けったいなことを言う。私が死んだところで、貴殿らには関係があるまい」
「なっ……!」
それは暴論が過ぎるだろう。
ここは紫色の靄のように、でたらめな現象が起こる世界なのだ。単独で行動していては、何か問題が起きた時に対処が難しくなる。まとまって動いたほうが、リスクは俄然低いはずだ。
そして、残りの人間というのは必然的に、今ここいる⑤班のメンバーに限られる。俗っぽい表現だが、すでに自分の命は自分だけのものではなくなっていると、そう言っても過言ではないだろう。
「爺さんの言うとおりだね。班のリーダーを任されて、頑張りたくなっちゃう
確かに、こうなった以上は、全員を一つにまとめあげることなぞできないかもしれないと、
襟を正す
その姿を
「ふっ、見かけによらず、貴殿は耳ざといな。案ずるな、他意なぞない。言葉どおりの意味だ」
「挨拶は終わった? じゃあ、そういうわけだから、俺は⑤班を抜けるね。もし、現地人がいるなら、ちょっくら殺して来たいし」
案の定、それに
「理由はともかく、私も団体行動はよして貰おうか。第一、私にしてみれば、この調査という名目自体が疑わしい」
「それは、どういう……?」
「簡単な話だ。私たちが無事に調査を終えたところで、その待遇に変化がないのではないかということだよ。私たちは死刑囚……。いくら国策とはいえ、死罪になった者を恩赦するとは思えん」
それならば、どうして司法取引を受けたのか。なぜ、危険を冒してまで調査員になろうとしたのかと、
「あははは! 気が合うね、爺さん。あんたも『
言いながら、ちゃっかりと鞄の中から取って来ていたハンドガンを一丁、
「かたじけない。もっとも、どこまで役に立つかはわからんがね」
あっという間の出来事だった。
パースに来てから一〇分足らずで、⑤班の人員は半分にまで減ってしまったのである。
残りの装備は、かろうじて
「とにかく逃げましょうよ!」
「そうだな……」
今、この瞬間に木々の陰から現れたとしても、何もおかしくはないのである。
落胆の色を隠せなかったが、互いが無事であるうちは固まっていたほうが安全だ。相手のことを信じるならば、その主張に変わりはない。
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