第48話エピローグ

 メデューサとエリーの唇が重ね合わさった瞬間、二人の身体から魔力がほとばしる。


 水流が高所から低所へ流れるように、魔力がメデューサからエリーの身体へと流れ込んでいく。

 神の姉妹の口づけは、互いの魔力が均衡するまで続いた。


「これで、よし」

「えっ、ちょっ、何してるのよ!?」

「私の魔力、わけた」


 メデューサは唇を離すとステンノには気にも留めず、こちらへ向かってくる。


「これで、エリー、お姉ちゃんは戻ってくる」


 そう言うとメデューサはエリーを指さした。

 つられてそちらに目を向ける。


「ん……あれ……?」

「エリー!」


 慌てて駆け寄る俺たちを見て、エリーはふわりとほほ笑んだ。


「なんか、戻ってきたみたい」

「よかった……」

「ありがとう。メデューサ。でも、どうやって?」


 エリーの問いかけにメデューサは淡々と語る。


「もともと私はあなたの魔力と遺物で目覚めたの。だから、私を構成している魔力はあなたと同じ。それに姉妹、でしょ? 身体の性質も神格も似ていたから魔力を共有したの」

「共有ってどういうこと? いくら神だとしてもできないわよ。そんなこと」


 ステンノの疑問に、メデューサは胸元から心臓の形をしたオブジェクトを取り出した。


「もともと、わたし、エリー姉の魔力でできてるの。エリー姉と私は一緒。同じ波長の魔力でできてるからはんぶんこできる」


 メデューサの説明から推測するに、そもそもメデューサが現実世界に現界する際に使用されたのは彼女と縁のあるオブジェクトとエリーの魔力だ。現界させるために魔力が必要な理由は基本的に、現界時の身体を構成する材料が必要であるからだ。


 つまり、エリーの魔力でメデューサが現界したのなら、その体を構成する魔力はエリーと同質なのだ。

 さらに加えて、エリーとメデューサが姉妹であり神格・権能が近しいことも大きな要因らしい。


「でもはんぶんこしてるから、私たちはもう神様じゃない。人間と同じ」

「それでもいいわ。この世界でも三人が一緒になれたのだもの」


 ステンノは二人を抱きしめたまましばらく3人だけの姉妹を全身で再確認していた。


 〇


 その後、ダンジョンから脱出した三人の元女神たちはダンジョンで預かることになった。


 変異神域の発生要因を探るために彼女たちの力が必要だというのが建前で仮眠室を彼女たちの部屋にしてもらった。


「彼女たちがいれば、ケイもここにいてくれるだろう?」


 神崎さんはそう言うと豪快に笑った。

 どうやら一連の騒動が終息していても神域の発生は続いているとのこと。


「神域専門チャンネルとでも改名しますかね」


 そうぼやくと俺はまたダンジョンに潜っていくのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

帰還した元勇者の女神管理チャンネル~【Sランク配信者】ギルド最高ランクをもらったから今度はダンジョンを救ってみた【変異】~ 紙村 滝 @Taki_kamimura7

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ