5. why for?

 幼い頃から当たり前のようになっていた暴力や暴言。当たり前になっても慣れる筈は無く、苦痛であることには変わらなかった。

 いつからだろうか。正確には覚えていないが、生きる意味について考え、死にたいと口にするようになったのは、まだ片手で数えられるような年齢の頃だった。

 何度も壁に頭を打ちつけたり、息を止め続けたりするようになった。2年程前は、首を吊り、失敗して身体に残る痛みと虚しさに襲われたことを覚えている。

 理想を押し付けられ、何に対してもこうしろ、ああしろと、言われ続けながら訳も分からないまま必死に生きる理由なんて何処にも無かった。

 いじめを受けている間は特にそうだった。


「遊びに行くんか?良いよな、お前は。こっちはお前たちのせいで…」


 と小さく呟く父親の言葉から、余計に消えたいと感じた。望まれないのなら、消えても良いよな?と。

 少しでもお金を使わないで済むように、中学の制服は兄のお下がり。ボロボロで黒ずんだ制服。少しでも綺麗であろう、とアイロンをかけていると、『お前みたいな中身の無いクズが何したって意味無いねん!そんなことするな!』と殴られた記憶もある。

 ニュースで小さな子を目にすると、外で子供が泣いていると、『ぶっさ』『ちっ、うるせえなぁ』等と口にする彼を見ていると、何もかもが分からなくなる。

 そもそも、どうして僕の命は此処にある?自分にとって都合の良い奴隷が欲しかったのか?

 考えれば考える程、止まらなくなる。

 親が子供に何かするのはおかしい、けどこっちは親やからお前たちは親孝行しろ。といった発言をしており、どうしても自分は奴隷なんだと感じてしまう。

 そんな人生を望むわけも無く、ただ、自分の意思も分からない。だから、僕は死ぬことよりもこのまま生きていくことの方が怖く感じるようになった。

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