4.bully me
苦痛に耐え続け、その日は突然にやって来た。
中学2年生の夏頃、僕に対するいじめが始まった。原因は、単なる相手の勘違いからだ。
当時、学校中の嫌われ者だった女の子に対する愚痴を友人が僕に言って来た。それに対して、僕は『はいはい。そんなんええから』と済ませたが、その女の子は僕が彼女の悪口を言ったと勘違いして大泣きした。
それまでその女の子に対して嫌悪を抱いていた者たちも、その瞬間から僕という共通の敵を見つけて協力を始めた。
それは他の学校にまで広がり、何処に言っても後ろ指をさされた。彼女は次第に多くの嘘を重ねるようになり、僕に対する周囲の嫌悪は強くなった。
机の落書き、自分だけ周らないプリント、折り鶴を飾られ『あいつは死んだよ』と笑う声、椅子や机を蹴り飛ばされ、暴言を吐かれ、嘘ばかりを広められ、次第に学校や塾へ行かないようになった。
それによりいじめが発覚し、大事になった。
学校から電話が掛かってくる。それに対し、父親は『あいつがクズで頭悪い上にカッコつけやから悪いんですよ』と訳の分からないことを言って笑っていた。
僕は何もしていない、と事情を説明し、唯一真剣に話を聞いてくれたのは、当時新しくやって来た担任の先生。それはとても真面目で、面白いかたで、とても好きな先生だった。そんな彼が家にやって来て言った言葉は、『正直、学校や先生は自分の立場が一番大切』ということだった。
失望した。そうだ、所詮学校なんていうのはいつの時代もそういうものだった。
いじめはダメだと口で言うだけで何もしない。そんな光景、テレビで飽きる程目にしていたじゃないか。
放課後何度も呼び出され、数人の教師の前で話をする。そこで当時社会の担当をしていた教師が言った。
「あの子は性格悪いからなぁ…。いじめられて当然やで」
そうして笑顔を浮かべる教師を見て、僕は諦めた。やっぱりどこにも救いなんて無い。いつも僕を傷付けるのは他人で、それでも、そんな僕を救うのは僕だけだった。
そして帰宅して言われた言葉に絶望を覚える。
「担任の先生から電話来たけど、お前がその子の悪口を学校の裏サイトに書いてたから、今回はお互い様って感じで終わってんな」
頭の中が真っ白になった。そんなこと一切知らない。そもそも学校の裏サイトなんてものは存在しなかったし、あったとしてもそのような投稿はしていない。好きだった先生に裏切られた。
当然そんなことでいじめが終わるはずも無く、苦痛は続いた。
そして、今まで何度も呟いてきた言葉を口にした。
「……死にたい」
一度母親から言われたことがある。
父親からの暴力に母親が耐えていなかったら、今の僕たちは居なかった、と。
——そんなこと、望んでいないのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます