6.slave
僕が幼い頃から父親は、『自分のことは自分でしろ!』と言って何かをしてくれることは無かった。それはただ、自分が何もしたくないが為の言い訳であることは明白だった。
そんなことを言うくせに、彼は自分のすべきことを何もしなかった。どんなことでも僕たちに指図してやらせるだけで、驚く程に怠惰で横暴な人間だ。
逆にこっちが大きな子どもの世話をしている気分だった。
飲み干したコップのふちを爪弾きして音を鳴らす。それはコップにお茶を注げという合図だった。あまりにも腹が立ち、一度だけ無視したことがあるが、その後はいつも通り逆上されるだけだった。
「お前よぉ!ほんまに気ぃきかへんなぁ!」
いったい何様のつもりなのだろうか。
いつからか、近くに居るのが嫌でご飯はなるべく少量を無理矢理口に詰めて早く済ませるようになった僕だが、いつも遅くに食べ終わる父親に『お前は自分のだけ片付けたら良いと思ってんのかぁ⁉︎』と怒鳴られたことがある。
他にも、大食漢の父親だが、朝から炊飯器の中の米を食べ尽くして放置し、昼までに気付かずに炊かなかった僕たちに対して、茶碗を投げつけ『しょーもな。こんなことも出来ひんのかよ!何のために学校言ってんねん、そんなんやめてまえ!』とまで言われたことがある。
食べ散らかしたお菓子のゴミを放置せずに自分で捨てるように指摘すれば、『気付いたらヤツがやれ!使えへんなぁ!』とも言われ、便利なメイドが欲しければ、人並みに稼いで誰かを雇って欲しいものだと強く感じた。
いつも、自分だけの為になることを『〜したら良かったのに』とか、『〜してあげたら?』とか言っており、やはりこういう日頃の細かな部分から人格は出てしまうのだなと痛感している。
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