2.leech
貧困家庭と呼ばれるような家庭で産まれた僕たちの生活費は、母方の祖父母から支援されていた。家や車を購入する際も、母方の祖父母がお金を出したと聞く。
そのように、一切頼ることの出来ない程度の父親の収入だが、それでも彼は金遣いがとても荒く、夫婦喧嘩の声は聞き慣れていた。
現在住んでいる家は、何度も引越しを繰り返した後にやっと定住することの出来た場所である。
見栄っ張りである父親は、自分の収入を考えず、大きな家を買っては支払いきれずに引っ越すということを繰り返してきた。
さらに、車を購入する際には、母方の祖父がお金を出して購入してくれるというのに、無駄なオプションばかりを付けてかなり大きな金額にしたと言う……。
当然、金銭関係以外での喧嘩も多く勃発していたわけだが。
そんな環境で、親からのお小遣いというものは当然今まで生きてきて一度も貰ったことは無い。
それを知っている母方の祖父母は、時折りお小遣いを渡してくれ、僕たちはそれをコツコツと貯金していた。
しかし、「また今度返すから」という言葉を信じた僕は、小学生の頃に兄の病院代を払う為に1万円を父親に貸した。
どれだけ待ってもそれが返されることは無く、純粋な気持ちで問う。
「この前の1万円はいつ返してくれるん?」
「ガキの癖に金、金言うな‼︎」
そして、いつものように暴力を振るわれる。
そのガキに金、金言って奪い取るお前はいったい何者なんだ、という言葉を飲み込んで耐える。
今思えば、父親が借りたお金を返すはずが無いのは分かりきったことであるが。
祖父母から数千万ものお金を借り、返すのはパチンコで当たった時にほんの少しだけ。そんな状態を見兼ねて激怒する祖父に対して父親は逆上して今後一切返済することは無くなった程だ。
そして代わりにそれを母親が働きながら少しずつ返済していくわけだが、2年前——祖父が自殺する頃には未だ1千万円以上の借金が残っていた。
突然の知らせに絶句し、悲しむ母親に対し、父親は『遺産は?』とそんな話しかしなかった。
彼に対し、母は今まで払ってもらっていた僕たちの生活費や小さい頃の養育費、そして返済しきれていない祖父への借金がある為に受け取ることを迷っているという話をした。
「そんなことどうでも良いねん‼︎」
と、いつものように逆上して暴れ回る彼を見て、僕は形容し難いような不快感を抱いた。どんなことがあっても自分の非を認めずに暴れるだけ。王様にでもなったつもりなのだろうか。
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