第5話「予習の成果」
一行は北へ向かう。その道すがらに見かけた者や通り過ぎようとする者に声掛けを行い、
しかし……というか、やはりというか。有力な情報は得られない。
気分転換もかねて西部はスフリンクとの国境側に行き先を変えてみることにした。
その道中──
「北部からスフリンクへの入国はそんなに危険なんですか……?」
ジュリアスは今、兵卒の一人に話しかけられて解説しているところだ。
「ああ、やめた方がいい。スフリンクの北部一帯はほぼ未開発でな……原因となっているのが
「追い出される……ということはおそらく
兵卒が口にした
「それにな、森の中はもっと危険だぜ? 狼だけじゃなく猪、流石に熊はいないけど
「その前に
兵卒から
「まぁ、それはそうだな。……それじゃ、質問だ。そういう狭くて深い魔孔の場合、どんな
周囲を見渡す限り、怪しいものは未だ特に見当たらない。
何もない暇潰しがてら、ジュリアスは兵卒らに
「どんな
「虫──例えば
しかし、ジュリアスは首を横に振った。不正解だ。
「君らの答えは総じて浅い魔孔の
ジュリアスは将来、仲間と行くかもしれない場所の情報を少しずつ集めていた。
その為に仕入れた情報を今、こうして披露していたのである。
「悪霊かぁ……」
悪霊が相手では
そんなものが薄暗い森の中を漂っているのである。しかも悪霊どもは生者に好戦的で、実体化した紐状の
「雑魚だけでもそんななのに、まだ
「──いや、そうとも限らないな」
ここまで黙って聞いていたエリスンが口を挟んでくる。
「個にして群、群にして個。森の中に発生する悪霊全てが
「まぁね。そういう訳で、北回りからのスフリンク南下は愚策も愚策な訳だ」
また、それだけではなく地理的にもスフリンク東部は北から南を縦断するダイン川が流れており、経路も大きく制限されてしまう。※(橋を渡らなければならない上、幅も橋によってまちまちである)
さらに都合が悪い事に中央には国境から国境へ、東西を直通して結ぶ街道がある。
この街道はスフリンクの騎兵が百人体制で巡回しており、
「もしも俺が
「それで初日から南部を重点的に捜索する指示が出てたんですね……」
兵卒が
「そうだな。通信班での話を聞く限り、初動が肝心だったな。見つけられないまでも如何に国内に閉じ込められるか……それに
「
「多分ね。……
ジュリアスはエリスンからの問いかけに肯定し、少し声を抑えてそう
「事件の二日ほど前に入国して、南の大陸から岩塩を売りにきた商人がいる。隊商は組まず、商人と付き人とで
「……北へ?」
「表向きは販路の開拓らしいな。目的地はギアリング北部の街ミゲル。途中、集落に寄りながら2~3日をかけてゆっくりと進んでいる」
「……何故、その一団が怪しいと?」
エリスンが尋ねる。
「別に一つに
「ふむ……」
「勿論、そいつら自体が
ジュリアスはそう
「そうか……君は、その一団が怪しいと踏んでいるんだな?」
ジュリアスは小さく笑った。その答え合わせは五日後に明らかになる──
*****
<続く>
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