第2話「面接・2」
「ノーライトの
ジュリアスが思わず身を乗り出して、声を上げる。
「じゃ、何か? ノーライトの連中が犯人の素性を教えに来たとでもいうのか?」
「そのまさかです……翌2月1日、白昼堂々と
ノーラではなく、代わりにティコが答えた。
「信じられんな……」
ジュリアスは
そうして、両手を頭の後ろで組む。
「君の言わんとする事は分かる。百年以上前に休戦しようがユニオンとノーライトは今も尚、敵同士……加えて犯人の一団は以前から亜人を標的とし、ユニオンの前身は言わずと知れた『人類(亜人)連合軍』だ。ノーライトが裏から犯人側に手を貸す事はあっても、ユニオンに利することはしない。それくらいは推察できる」
「……ノーライトの自作自演じゃないのか?」
「或いは
「……早い話、売られたってことかな」
「私の見立てでは、ね」
あくまでエリスン個人の推察であると、ジュリアスに断る。
会話の終わりを待って、ティコは話を進めた。
「……我々はノーライトが
「……南は?」
「
「現状、打てる手は全て打ったって感じだな。問題があるとすれば初手以前の段階で
「もしも転移や転送の魔法を使われていたなら、ということか……?」
ジュリアスの方を見ながら、エリスンが呟く。
「それでは流石に
「転移の魔法は熟練した魔術師でないと安定して使用が出来ませんし、それは転移の魔石でも代用可能ですが
「加えて、転移には効果範囲の問題がある。ざっくりと言えば持ち物制限があるって事だ。単独犯ならまだしも仲間がいたなら、まずそいつは置いてけぼりだ。被害者を抱えて仲間がしがみついてきちんと跳べるかどうか──機能劣化した転移の魔石で? 魔術師や本物の製作者が協力する、というのはなしだ。
頭で組んだ腕を
「……では、転送はどうだ?」
「まず魔道駅は除外していいだろう。日没以後は休眠するし、日の出から即起動するものでもない。さらに魔法陣は自動的に作動するときたもんだ。高度な技術と知識、魔力によって強制起動は出来るがあまりに危険すぎるし、それを想定するのは無理筋だ。というより、それをされていたら魔道駅の機能そのものがぶっ壊れているしな。既存のものは利用不可──となれば、後は自分達で転送の魔石を調達して転送魔法を使用する訳だが……」
「その仮定も無理筋でしょう。単独の転移より難易度は下がりますが、それでも一人は魔術師が要る。それに難易度が下がると一口にいっても魔法陣を整備している事が大前提です。それこそ大掛かりすぎます。効率的ではないし、効率的に運用しているとしたら、あまりにも洗練された犯罪組織です。
「付け加えれば──仮にそんな組織があったとしてさ。最精鋭集団を作れる可能性があるのは西と南の大陸に、あとはデルタ島くらいなものか……極東列島は落第かな、規模が小さく最精鋭にはならないだろう。
「間違いなく財力はあります。その一方、財力でどこまで悪評を覆して人材と物資を確保できるかが焦点になりますね」
「必要不可欠な一流どころが金で動くかはいいところ半々だろうな。組織はあってもユニオンやノーライト級の精鋭集団は出来ないだろう。つまり、不適格だ」
ここでの不適格とはここまで話し合われてきた想定以上の怪物集団であるかということである。仮想敵の過小評価は危険だが、同様に過大評価も禁物だ。
「──と、いうことさ」
「……よく分かった」
エリスンを見ながらジュリアスが言った。
エリスンは椅子の背もたれに体を沈め──ひとつ、嘆息を
*****
<続く>
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