万年補欠の下克上！（第4期）はずれスキル「支援魔法（対単体）」しか持たない低辺勇者は野球少年に転生してメジャーリーグで無双する。

【23回の表】憧れたちを巡って。

　7月25日（月）

　　今回の遠征は10日間。カンザスシティから西海岸のオークランド、シアトルだ。そしてこのオークランドには松居さんがおり、シアトルにはヰチローさんがいる。この2人は現世の俺世代にとっての「伝説（レジェンド）」であり「憧れ（スーパースター）」である。

　前世の俺にとっての尾羽定春（おうさだはる）（世界のホームラン王）と一緒なのだ。（ちなみに永嶋繁雄（ながしましげお）氏も同時代のレジェンドなのだが俺が小学校に上がる前には引退しており、現役時代の記憶がない。）

　俺が松居さんに挨拶に行って金沢の銘菓と石川県の地酒を渡した。（松居さんは石川県出身。）オークランドは昨日までヤーナーズを迎えていたのでNY関連の土産はいらないと思ったからだ。

「西海岸は暮らすには快適ですね。」

「まあ俺は北国出身なんでね。東海岸でも十分快適に暮らせるぞ。」

　松居さんは故郷の土産者に驚いて笑っていたが、お菓子に関しては報道陣の前で「賞味期限」をしっかりと確認していた。もちろん半分はジョークだ。

「健、ワイロは良いけど手加減はしないからな。」

「いやー、そこをなんとか。」

報道陣向けの小ネタも披露。

　後でどこで手に入れたか報道陣に訊かれたが「秘密です」と言っておく。亜美のチームメイト経由で手に入れたものだ。俺と亜美の「収納魔法の双方の扉（ホットライン）」を使ったのだ。

　ただ対戦はうまいこといかず、ア・リーグ西地区最下位にあえぐアスリーツ相手に４戦して１勝３敗。取りこぼしてはいけない場面で勝ちきれないようではポストシーズンには届かないかもしれない。もっとも俺も打率が下降しているので、もう少し打撃を見直す必要がる。

７月２9日（金）

　今日からシアトル・マトリクスとの３連戦。

俺が挨拶に行くとすでに取材陣に囲まれたヰチローさんがこちらを見て一瞬だけニヤリとした。

　「あれ？健、先輩への貢ぎ物は？」

サプライズのつもりだったがどこから漏れたんだ？

「日本のスポーツニュースでやってた。嫁さんから聞いた。」

さすが奥様、情報収集には余念がないな。

　俺が渡したのは 神戸のちょっと日持ちのするスイーツ。まこれも亜美にお取り寄せしてもらって（以下略）。

　ヰチローさんは

「あれ？俺は故郷のやつじゃないの？」

　愛知県（ヰチローさんの出身地）も島根県（奥様の出身地）のものも入手するつてがなかったので、彼の日本での所属球団の街のものにしたのだ。

　今日は先発投手（右投げ）。

１番ヰチローさんの最初の打席、初球に思わず力んでしまいど真ん中に。そこは俺のコーナーワークを知り尽くしてるヰチローさんが思わず手を出しての打ち損じ。危ない危ない。無心でいかないとせっかくの魔法制御が乱れてしまう。「ヒヤリハット事案」やで。

　冷静さを取り戻した後はいい出来の投球。右打者への縦スラと左打者へのスプリットが効きまくる。データ上では左右に曲げるドア系投手になっているはずなので、いろいろな攻め方も必要になってくるのだ。

　とにかくヰチローさんをノーヒットに抑えられたことが自信に。味方も８点獲ってくれたので９回を投げ切って0-8の完封勝利。３安打３四球11奪三振。９勝目を挙げる。二けた勝利も見えてきた。

7月３１日（日）

　昨日は完全休養を言い渡され宿舎に引っ込んだ。ヰチローさんからお土産のお礼にと行きつけのお店を紹介され、今日先発投手のヘル吉とディナーに行ってきた。一応先発投手は登板日前後はベンチ入りを免除されることが多いのだ。（練習は参加）。　

　日本でも本格的な夏休みシーズンということもあり日本人対決を目当てに日本から観に来てくださったお客さんもたくさんいたのでそこは申し訳なかったのでいつもよりも対サインの応人数は大目に。ちなみに仲間外れになったデズがぶーたれていたのでお土産を約束。

　回らない寿司屋での「おまかせ」コースだったので薄給の２人（オレたち）は緊張していたがヰチローさんのおごりだった。

　今日は２人ですぐにヰチローさんにお礼をする。

「俺の好きなコースに１球サービスしてよ。」

ヰチローさんが冗談めかしてヘル吉に言うと

「どのコースですか？」

と真面目に取り合っている。ボケ倒したのではなく単純に緊張してたのだ。考えてみればヘル吉にとっても憧れの選手の一人だったのだ。俺としてはその場面が一番周りにウケたのでヘル吉に嫉妬。

　俺は８番左翼手での先発。相手が左腕だからということもある。だから俺は左腕が苦手なんじゃなくて対戦回数が少ないだけなんだが。２回表の最初の打席でヴァルガスの第２球目が真ん中への４シームだったので思いきり振りぬいた。左翼席への３6号２ラン本塁打。ベンチに帰って監督に「右もいける」ことをアピールしておいた。

　１対10で勝ち、このカード勝ち越し。長期遠征を終えてセントピートへの帰路についた。

　ただレイザースの７月の成績は11勝15敗と負け越し。首位ボストンと10ゲーム差、ワイルドカードを持つ2位ヤーナーズとは8ゲーム差。誰が見ても絶望的とも思えるゲーム差だが、この物語は「下克上」の物語なのである。

沢村（TB)　37

バチスカーフ（TOR）31

テシェイラ（NYY）29

グレンダーソン（NYY）27

今季の沢村健の成績（7月24日現在）

打撃

（左）打席213　打数176　安打67　単打15　二塁打18　三塁打6　本塁打27　

打点72　四球34（敬遠9死球2）犠打1（犠飛1）敵失1

（右）打席71　打数60　安打24　単打10　二塁打5　三塁打1　本塁打9　打点29　四球10（敬遠2死球1）

合計　打席284　打数236　安打91　単打25　二塁打23　三塁打7　本塁打36　

打点101　四球44（死球3敬遠11）犠打1（犠飛1）盗塁8　敵失1

打率.386 出塁率.480　長打率1.000　OPS1.480

投手

（左）試合9（先発9）67回　自責点12　防御率1.61　5勝0敗　QS8　被安打50　四球14　三振50　WHIP 0.9552（とても良い）

(右）試合9（先発8）64回　自責点17　防御率2.39　4勝3敗　QS7　被安打48　四球14 三振60　WHIP 0.9687（とても良い）