第26話 呪と、帰還の要請と、襲撃の真相
ミケは十七歳になっていた。
まさかとは思うが大掛かりな食事とか用意されると、また、大好きだけどお肉になる子が増える。備蓄があるのかもしれないが、まあ、いいじゃないか。今までの誕生日は村の人がこぞって祝ってくれたのだし。
いいじゃないか。
各部屋の洗濯物を持ったメアリーにだけは教えたが、あいにくあなたの素敵なパンに叶う贈り物がないのよね、どうしよう、静寂の反応。思い人にフラれたばかりだもの、心は凪いでいる。
「なにもいらないよ、お仕事中ごめんね!」
ただあなたとの年が縮まったわけではないけれど、一歳近づいたのを教えたかったの。
……それだけ。
そして。
「ミケ。昨日の、『お揃いのお土産』の絵本は、告白か」とコクヨウ。
「はい?!」
いえ、断じて同じものを持って距離を縮めたいとか思ったわけではないです!
どうしてそうなったのかとなった時。
(恋愛ものだし一緒に呪を解こうと思っているし、ああ、早くしないとコクヨウの命も気になるし!)
コクヨウはミケの言葉を待っている。
「仮にそうだとして、コクヨウ様。私を特別に思えませんよね」
今度はコクヨウが悩み。
「ミケの反応次第だ」
私の反応次第?!
どういうことでしょう。
「それは、たとえば本の中の恋人達とか、家族みたいな関係になれば、私を特別に意識する可能性があると?」
「……恥ずかしいのだが」
なんだか視線を逸らして、こちらを見ないで語る珍しいコクヨウ。
「今日あたり、両親と神獣エルフが訪ねてくる。はずだ。俺の誕生日を向こうであやふやに覚えてなければ」
え?!
「え?!大事な日じゃないですか。どこで会うんです?お祝いですね、というか、お誕生日!」
ミケはコクヨウからの返事から妙なテンションまま、
「お誕生日、おめでとうございます。十六歳ですね!」
コクヨウは思う。こんなふうに周りに祝ってもらえたら、ミケからの反応も薄く感じて、気にならなくなるのでは。全ては水の国の占術とデュラハンの言い伝えが、結びつけた特殊な糸。
「お誕生日の贈り物、なにがいいですか?コクヨウ様」
「ミケ」
「はい。」なんでしょう。
「ミケが欲しい」
……。
「……コクヨウ様、わたし、手に入れてもなんの価値も無い十七歳です。お城の使用人は足りてますし、足りて、ますし、……?」
「ミケを手に入れれば、お互いの呪が解ける」
「その、私が思っているのとは違うのはわかっているんです。ただ、合っている部分もあるんですよね」
「今日、父上と母上と神獣様に相談する」
「……言葉を選んで相談してくださいね」
「俺だって、欲しい女がいるがどうやって互いの呪を解けばいいかわからない、なんて愚かな質問はしない」
「……よかったです。それで、なんと聞くんです?」
「この呪はどうやったら解けるのか。帰ってきてはくださらないのか。十六年前のデュラハンの襲撃はなんだったのか」
「いいとこつきますね。知りたいです。が、ご両親はそんなことまでわかるのですか?」
「千里眼を持つエルフに頼む」
「最高の力では……!」
「見えるだけで辛かったらしいので、頼ったことは無いが、いままで気にしなかったことが、ミケ、お前との出会いで一気に気になり出した。聞いてみようと思う」
ミケはうずうずと伝説の人たちに会えるのと謎が解けるかもしれないのでワクワクとしてきた」
「いつ、会えるんです!」
「黒き森の中で」
「?、お城の中でお祝いしないんですね」
「俺が生まれた時時空が歪んでしまったから警戒している。森ならば何かあっても、すこし神隠しに遭うだけだ」
「それはそれでたいへん怖いですね」
「一緒にくるか?」
「平気なんですか?ご家族との再会に立ち会って」
「呪の事。帰還の要請。デュラハンの襲撃。大事であろう」
「確かに。お供させてください」
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