/// 16.新たな拠点

孤児院の様子を見てきた加奈が、夜に帰ってきて部屋のドアを開けた。そして・・・


「タケルくん!!!」

「えっ・・・」


僕は佳苗(かなえ)に押し倒されていた。


「タケルくんタケルくん!タケルくん!!タケルく~ん!すーはーすーはー!あーータケルくんの匂いが充満してる!凄い!凄いよタケルくん!!!」

「まって、まってよ佳苗(かなえ)ちゃん、あ、ちょ・・・首筋はよわっ・・・あ、耳元でしゃべるとあっ・・・」

「タケル?この女も群れの仲間にいれるのか?」


突如襲い掛かってきた佳苗(かなえ)を、タケルから引き離すサフィさん。

そして佳苗は「はっ」とした顔をしてから、真っ赤になって・・・部屋の床に綺麗な土下座をしていた。


「タケルくん。お久しぶりです。お元気そうで何よりです。突然匂いを嗅いでごめんなさい。我慢できなかったんです。もう後悔したくないんです!群れに入れてください!サフィさんもどうぞよろしくお願いいたします」


土下座をしたまま一気にまくしたてる佳苗に思考停止中の僕は、サフィさんの「新しいメスがまた来た!」という言葉で再起動するのであった。


「あ、佳苗ちゃん、いや群れに、とか意味わかって言ってるということでいいんだよね?というかそんなキャラじゃないでしょ・・・」

「うん、ハーレム目指すんでしょ?加奈に聞いた。あっ、加奈がばらしたわけじゃないよ。加奈にタケルくんの匂いがついてたかから問い詰めただけだから。私・・・ずっとタケルくんだけ見てたの。でも元の世界じゃタケルくん壁作ってたみたいだから我慢しなきゃって思ってて、でもこの世界にきてから我慢することないんだって思ったのね。でもタケルくん死んじゃったって言われて、もちろん信じてなかったけどね!それでね、やっと会えたんだからちゃんと声に出していこうかな?って、後悔したくないから欲望に忠実になろうかな?って、だからどんな形でもいいからハーレムに入れてほしいな・・・だめ?」

「だめ、じゃない、です・・・」


佳苗の長い言葉が終わった僕は、ついOKを出してしまった。いや元々、大好きだからね。断るなんて選択肢ないんだからね。佳苗は僕の返答をきいて、満面の笑みを浮かべた。


「サフィさん、ですね?」

「お、おう・・・」


珍しくサフィさんが気押されているようだ。


「サフィさん。すでに窺っているかは分かりませんが、タケルくんの幼馴染の並木佳苗(なみきかなえ)です。よろしくお願いいたします」

「おお。タケルがOKしたメスなら俺も文句はねーよ!よろしくな!」

「はい!・・・では、失礼して・・・」


サフィさんの返事を聞いた佳苗は、立ち上がるときょろきょろと部屋を見回し・・・部屋の玄関ドア付近にロックオンすると、近くのドアをあけこちらに一旦笑みを投げかけた後、その中、つまりは脱衣所へと入っていった。


「あ、おい・・・タケルも行った方がいいんじゃねーか?」

「えっ?ダメでしょ・・・トイレかもよ?」

「トイレはこっちのドアだろ・・・行っとけよ・・・なんか面倒になりそうだから・・・」

「そうですよ!私もその方がいいと思います!」


サフィさんと加奈に急かされ、仕方なく僕も脱衣所へ向かう。

せめてユニットバスであったなら、トイレではという言い訳も成立したのに・・・いや、嬉しいよ僕も。大好きだし。でもタイミングここ?なんかちょっと怖いよ?

そして僕は、脱衣所にはすでにいなかった佳苗を追うように、服を脱いで浴室へと入っていった。


◆◇◆◇◆


昨晩は、佳苗とお風呂場で結ばれ、そして夜はベットで改めてみんなで交流を深めた僕は、スキル【超回復】のすばらしさを知った夜であった。

さすがに遅く起きた僕は、横に寝そべる裸体が3人に増えていることに喜びを感じざる得ない。

そして颯爽とベットから飛び起きると、身支度を始めた。

暫くするとそれぞれが起きてくるのだが、佳苗はかなり恥ずかしそうに顔を赤らめながら身支度をしていた。


「タケル!今日はどうするんだ?予定通り買い物か?」

「あーちょっと予定変更。午前中に孤児院の方に佳苗を送り届けて、できれば他のクラスメートにも挨拶をしときたいなと・・・」

「あ、タケルくん?それならいっそ、孤児院にみんなで住む?私の部屋結構広いし・・・あっ・・・大きいベットは買わなきゃだけど・・・」

「そ、そうだね。それもいいかもね・・・でも一回行ってみようか。僕らのことを他の人たちが嫌がっても困るし・・・」

「大丈夫!困るっていう方が困ることになるだけだし・・・」


なんか佳苗が怖い事を言っている気がしたが気のせいだと思うことにした。

そして結局は全員で孤児院に挨拶に行くこととが決定した。


◆◇◆◇◆


佳苗が孤児院の玄関ドアを開ける。


「あっ!佳苗!どこに行ってたの!」

「そうよ!全然帰ってこないんだから!」

「子供たちが加奈ちゃんと一緒に出掛けたって聞いたから少し安心はしていたけど・・・」


一緒に生活をしている3人はそばまでやってきて、口々に声をかける。考えてみたら当然のことだ。まずは説明をと最初に佳苗を突入させた僕はなんだか悪いことをしたと反省していた。


「ご、ごめんねみんな。ちょっと・・・テンパっててね・・・全部忘れてた・・・」


そんな返答に、孤児院で待ちぼうけを食らっていた三人はあきれ果てていた。


「もうちょっと詳しく説明して!」

「真理ちゃん落ち着いて?」

「落ち着けるように説明して!」

「怖いよ真理ちゃん、あのね・・・タケルくんと結ばれました♪」


説明はそこじゃないだろ!という心の突込みをした僕は、しばしの沈黙に喉がゴクリと鳴っていた。


「えっ?」「えっ?」「えっ?」「・・・えっ?」



「なんで佳苗まで『えっ?』なのよ!」

「ごめんごめん!いいかな?僕が説明した方が早い気がする!」

「えっ?」「きゃっ!」「わ-!」


我慢できなくなって割って入った僕を見て、孤児院組の三人が驚嘆&悲鳴を上げていた。


「なんで?本当にタケルくん?」

「あ、本物です。一応・・・」


まだ信じ切れていない様子の真理ちゃんが、色々あきらめたように「とりあえず中に入って・・・」と促してきた。

そして佳苗と僕と、加奈とサフィさんが孤児院へと足を踏み入れた。


「えっ?ちょ・・・誰?なんで?」


加奈は別として、サフィさんは初めましてなのを思い出して、紹介しておく。


「こちら、サフィさん。僕のパートナーです」

「俺はタケルの群れのメスのトップだ!よろしくな!で、全員群れに入るということでいいのか!」

「おいっ!!!ちょっとサフィさん?また何言ってるの?そんな訳ないだろ!」


またも突っ込まざる得ない僕。


「そ、そうか。なんかタケル今日は突込みが強いな。イラついいてるのか?昨日あんなにいっぱいしたのに・・・」

「くっ!なんでそうなるんだよ!なんでも取り込もうとしないでよ。みんな引いてるでしょ!」

「あの、説明を・・・」


泣きそうな顔で真理ちゃんが見るので、案内された今のテーブルに座るとこれまでの経緯(いきさつ)を丁寧に話した。


「事情は分かった。佳苗がタケルくんと加奈、あとサフィさんと一緒にここに住むというのは分かった。私は賛成。佳苗がどれだけタケルくんを好きだったのかは分かっているし・・・でも、悠衣子と康代の方はどうなのか確認してあげてほしい・・・」


真理の真剣な話しに耳を傾けていた悠衣子と康代は、即答で「いいに決まってる」と返答していた。

そのことに若干拍子抜けをした真理ではあるが「それじゃあ・・・」と話を続けた。


「私ね、ここを抜けるよ。いや、タケルくんのせいじゃないよ?むしろタケルくんのおかげで・・・私は冒険者としてもっと高みに行く!ここはタケルくん達に任せるよ!」


突然の宣言に沈黙ができた。それを破ったのは佳苗であった。


「ねえ・・・私たちは真理の足かせになってたの?私たちのことが負担になってた?」

「そんな訳ないよ!そんなこと・・・あるわけない・・・でも、私行くね。力を試したいの・・・」

「まって!真理!」


僕は、飛ぶように孤児院から飛び出していく真理ちゃんと、すがるようにしたけど結局は捕まえれなかった佳苗を見ながら、何も言えずに眺めるだけだった。

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