第29話テスト終わり

(やっと終わったー)


(テスト、お疲れさま)


(え)

珍しく由衣が、労て来て、驚きの余り、思はず声が出た。

(何よ)


(いやその)


(何よ)


(何時もなら、呆れる所かと)


(真二、私の事何だと、思ってるの)


(鬼)

と言い終えた瞬間、由衣が俺の耳を、引っ張て来た。

(いだい、いだい、す由衣さん)


(当然の、報いよ)

とさらに、由衣の引っ張る力が、強くなる。

(いだいす、まじで、ギブ)

それから、しばらくして、由衣が手を、離してくれた。

(ずびませんでした)


(分かれば、よろしい)

由衣は満足そうな、懲らしめてやった様な、何とも言えない、腹のたつ顔をして居た。

(あ、雪)


(は?)

突然何を、言って居るかと、空を見上げると、白い雪が確かに、落ちて来た。


(本当だあ)


(もうそんな、季節なのね)


(そうだな)


(真二、寄り道)

思いがけない、由衣の一言、正直雪も降って来たから、普通なら早く帰りたい。

しかし、由衣の誘いならば、是非いしょに行きたい。

(デートて事?)


(はい、はい、そうですよ〜)

由衣には、適当に返されてしまった。

(で、どこに行くの?)


(そうね〜)

そう言うと、由衣はしばらく、考えて、話して来た。

(海の見える電車で、雪を見る)


(良いね)

確かに、あの電車からの雪景色は、さぞかし、奇麗だろう。

(真二、早く)

由衣に急かされて、少し前を歩く由衣に合わせる様に、速歩きをする。

後ろから見る由衣の姿は、まるで雪を見て、はしゃぐ子どもの様に、見えた。

そんな由衣の後ろを、付いて行って、海の見える電車の、駅に付いた。

駅に付くと、丁度良く電車が来ていた。

(真二、早く)

急かさ無くても、電車の発車はまだなのにと思いながらも、由衣の後ろに続いて、改札を通る。

反対側に降りる、人達の肩には白い雪が付いていた。

そして、反対側に人を下ろし終わると、いよいよ、俺たち側のドアが開いた。

由衣が早く来た、お陰で無事に海が見える側の席に座れた。

ホームのお客さんを乗せ終わり、発車時刻になると、電車はモータ音全開で、待ってましたと言わんばかりに、駅を出発した。

しばらく外を眺めて居ると、雪はしんしんと降り、道路に落ちて消え行くのが見えた。

そんな、切ない、この景色も道路や海の近くを走る、この電車だから、見られた独特の景色だ。

そうして、電車は観光地の最寄り駅に付いて、俺たちはそこで降りた。

この駅は名前こそ観光の最寄り駅だか、実際は、もう一つの電車の駅の方が、近いし、安いと言う何とも、不憫な駅である。

(真二♪)


(ふぇ)

由衣が手を繋いで来た。

(寒いから、良いでしょ)


(確かに)


(ふふ)

手袋をすれば良いと言う、野暮なツッコミは今無しだ。

こんな幸せな、時間が続けば良いと、思いながら、観光地のもう一つの最寄り駅までの通を歩く。













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