第5話 お楽しみの後に訪れる異変

 今、俺の隣に香澄が寝ている。シングルを2枚敷いているが、1Rには余裕がなくダブルで2人寝てるようなものだ。この状況、シスコンの俺が大人しくできる訳がない…。



 「香澄。起きてるか~?」

俺は小声で彼女に問いかける。


「………」


反応ないから寝ているな。俺は仰向けから、香澄のほうを観る横向きに変えた。


…彼女も横向きだが、俺に背を向けている。寝顔を見たかったが仕方ない。俺は香澄の尻をパジャマ越しに優しく揉む。


女子の体は柔らかいって言うが、尻も例外じゃないな。昨日触った生足とは、違う柔らかさをしている。いつまでも触っていたい。



 「…う~ん」

香澄が寝返りしたがっている感じなので、手を引っ込める。


そして…。ついに向かう合うことに成功した。お楽しみの時間だ~!!


俺は互いの唇が触れそうな距離まで香澄に接近する。それから…、一瞬だが彼女にキスをする。…これは1回だけでは物足りないな。


香澄はバツイチだからキスの経験は何度もあると思うが、俺はない。俺の“初めて”を彼女に捧げることができた充実感が心地良い。やはり、好きな相手に“初めて”は取っておくべきだ。


タガが外れた俺は、何度も香澄にキスをする。最初よりも、時間と密着度を増やしながら…。キスの濃厚さに比例して、俺のは元気になっていく…。



 「ん~…」

香澄が再び寝返りをし、また俺に背を向けた。


名残惜しいが、今日はこれぐらいにするか。俺も疲れているし、夜更かしするのは辛い。…って、その前に元気になったを何とかするのが先だな。


俺はトイレでしてから寝たのだった。



 翌日。香澄と一緒に朝食を食べていると…。


「昨日、予知夢を見たかもしれないんだ~」

突然、彼女が嬉しそうに声をかけてきた。


「どんな夢を見たんだ?」

表情から察するに、良い内容だと思うが…。


「キスする夢」


「…げほげほ…げほ」

まさかの内容でむせかけた。もしかして昨日のがバレた?


「大丈夫? 兄さん?」


「ああ…」

夢の内容が気になるし、探りを入れてみるか。


「夢の話だが、誰とキスしてたんだ?」


「わかんない。顔は見えなかったからさ~」


相手が一番気になるのに…。残念だが仕方ないな。


「そうか。…その話、何で俺に言った?」


「新しい彼氏ができるフラグだと思ったんだよ。できたら紹介するから祝ってよね」


「…もちろんだ」


そう言ったものの、心の底から祝えるはずはない。香澄と同居したことで、彼女がさらに愛おしくなったからだ。このまま2人で住みたい…。これが本心なのだ。



 それからというもの、香澄は高校の時の友達と遊びに行ったり不動産屋に行ったりして、俺と別行動をとる事が多くなる。


遊びに行く友達は“女”と聴いてるから一安心だ。もし“男”だったら気が気じゃない。連休中も相まって、尾行したかもな…。


……試行錯誤を重ねたことで撮影の腕は上がり、香澄の一部始終を撮れるようになった。これは大切なだから、ちゃんと保存しよう。


夜の手出しについてはどんどんエスカレートし、バレない程度でパジャマ越しにを触りまくっている。一応俺の心は満たされているが、直接触りたい気持ちは決して消えはしない…。



 時は流れ、ゴールデンウィーク最終日の夕食時。俺は香澄に新しい家探しの進捗を訊くことにした。


「香澄。良い家は見つかったか?」


「見つかったことは見つかったけど、家賃がね~。かと言って安さ重視にすると、別のところが気になるし…」


話を聴く限り、決まってはいないようだ。明日から俺達は仕事始めになるから、探す時間を確保しにくい。ということは、しばらく香澄はここに住み続けてくれるな。


「前住んでたところは見たのか?」

香澄が卓也君と結婚する前に住んでいたマンションのことだ。


「もちろん見たけど、もう埋まってたよ。仮に空いてても家賃が厳しいね。あそこは父さんと母さんが援助してくれたおかげで住めたんだから」


俺の知らないところで、そういう話が展開されていたのか…。


「もうここに住み続けようかな~」


今の言い方は冗談半分って感じだが、そう言ってくれるのは嬉しい。俺と過ごすのが嫌なら、こんなことは言わないだろう。


「“気が済むまで”ここにいて良いと言ったから構わないぞ」


「兄さんは優しいね。あてはないし、これからもよろしく」


「ああ」



 翌日。ゴールデンウィークが明け、今日から仕事始めだ。連休明けは辛いが、香澄と同居してることが何よりの励みだ。彼女に情けないところは見せられない。


俺達は同時に家を出て、それぞれの勤務地に電車で向かう。



 ……最近は働き方改革や人手不足の影響か、ほぼ残業させずに定時で帰らせてくれる。単に、残業代を出したくないからかもしれんが…。


18時頃に帰宅すると、カギは空いていた。香澄はもう帰っているか。


「兄さん。ヤバい事になっちゃった~」

俺の帰宅に気付いた香澄が、部屋を出て玄関に来た。


既にスーツは脱いでおり、ラフな格好に着替えている。


「ヤバい事? 何があった?」

様子を観る限り、只事ではなさそうだ。


「今日、卓也がって言ってきた」


「何だと!?」

都合が良いことを言う…。別れの原因を作ったのは向こうじゃないのか?


「着替え終わったら話を聴く。ちょっと待っててくれ」


「わかった」


一度別れた奴に、香澄を任せられるものか! 詳しく話を聴いて、場合によってはガツンと言ってやらないとな!

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