第15話 摘発と迎え
怪しい荷の所在が判明してからは、あっという間に事が運んだ。
幸か不幸か、ヴァラジットの捕縛のために召集されていたエクロズの部隊が、二時間も経たないうちに十七区画六番地の倉庫へと突入し、木箱を押収。襲われた船の積載リストと照合した結果、盗品であることが確定した。ベウスは逃亡中らしいが、捕まるのも時間の問題だという。
「犯人を捕まえたんスか!?昨日の今日で!?」
見張り役なのか、普段と違って船の前に陣取っていたトルックとエーリーに事の次第を説明すると、そう叫ばれた。
「色んな人の協力のおかげでね。それにあくまで一部よ。でも、とりあえず皆の捕縛はなしになったの。襲撃から生き残った人が、絶対にヴァラジットじゃないって砦に言ってくれたのもあるみたい」
恐らくその辺りは、ジュリスたちが手を回してくれたのだろう。
「やだもう、あんたったら最高!さ、行きましょ。あいつの度肝を抜きにね」
エーリーは大笑いしながらシャニィを
「エーリー!そいつは絶対に通すなと言っただろうが!」
「事情が変わったの。追われていなければ、そこまでしなくていいでしょう?」
しれっと答えたエーリーに、彼は眉根を寄せた。
「シャニィが濡れ衣を晴らしてくれたわよ。犯人を捕まえてね。だからもう、交渉する必要も、逃げる必要もないの」
「……なんだと!?お前また危ないことに首を突っ込んだのか!?」
「倉庫に突入したのは私じゃなくてロズの部隊よ?私は危ないことなんてしてな」
「そういう物理的な意味で言っているんじゃない!」
声を荒げたヴァンジューは、顔を押さえて
「お前、なんでそこまでして……」
「……だって、もう一度ちゃんと話したかったんだもの。私、知っているのよ、ヴァン船長。あなたがとても大事なことを私に隠しているって。だから、決着をつけに来たわ」
シャニィが決然とヴァンジューを見上げたその時、船長室の扉が再び開いた。見覚えのあるお仕着せ姿が中から出てきて、シャニィは思わず固まる。
「お久しぶりでございます、お嬢様」
「……エメテル!?スーリクも!」
船長室から出てきたのは、兄ラジアンの従者とリーリア家の御者だった。後ろにもう一人知らない顔がいたが、呑気に素性を尋ねる空気ではない。問うようにヴァンジューを見上げると、答えたのはエメテルだった。
「サロウ船長がお知らせくださったのです。お嬢様が危ういことに巻き込まれていらっしゃると。ラジアン様はそれは心配して、食事も喉を通らなくなっています。どうかわたくしどもと共にいらしてくださいますよう」
トルックとエーリーも唖然としているところを見ると、ヴァンジューの独断であるらしい。
「シャニィ、
「待って!話を聞いて!私は叔父様の約束に強制されて仕方なく来たわけじゃないわ!」
しかし彼は耳を傾ける様子はなく、シャニィをリーリアの使用人たちの方に押しやる。
「もうこれ以上、首を突っ込むな。お前は危なっかしすぎる」
「聞いて!お願い聞いてよ!私は……!」
シャニィは必死で声を上げたが、ヴァンジューは背を向けると静かに告げた。
「帰れ。お前にふさわしい場所へ」
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