第9話

 俺はそのままそこにいたら、殺されるかもしれないと思った。

 タイミングを見て逃げようと思ったけど、住職がお茶やお菓子を勧めて来た。お菓子と言っても子どもが好きなスナック菓子ではなく、最中などの和菓子だった。俺は和菓子が嫌いだった。


 断り切れず、出されたお茶を飲んでお菓子を食べていたら、次第に眠くなってしまった。あくびが止まらなくなった。眠くてたまらず、うつらうつらと頭が揺れ始めていた。


 昼寝してくか?


 住職が言っていたが、俺は何と答えたか覚えていない。


 目が覚めるとまだ外は明るかった。

 俺はさっきの部屋で布団に寝かされていた。


 俺は命が危ないと思ったから、がばっとすぐに起きて外に飛び出した。

 それまで1分もかからなかったと思う。

 滑る床を靴下で走りながら必死だった。


 靴を履いて引き戸を開けた瞬間。


 外には人が何人もいた。

 庭師の人が庭木の手入れをしていたし、掃除の人がいて庭を掃いていた。

 参拝している人もパラパラといた。


 俺には誰も目を止めなかった。


 俺は走って、一気に自転車を止めている場所まで下りた。


 途中ですれ違った中には、知っている人もいたが頭を下げて走り去った。


「何で急いでるの?」

「大丈夫?」


 何度か声を掛けられた。

 俺は走り続けた。


 そして、そのまま自転車に乗って交番に行った。


 俺はそこで妹は寺にいて働かされていると訴えた。


 寺の息子が車で通りかかった時、妹を見かけて「乗せてやる」と、声を掛けたんだと作り話もした。多分そうだろうと思っていた。妹は車が好きだったし、住職の息子のBMWに乗ったと家で自慢したかったんだろうと思う。


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