2-5 今すぐ、事務所に来てください
「ん~」
彼は棚に置かれた電気ケトルのスイッチを入れた。「どうして知りたいの?」顔だけこちらへ振り向く。
その表情に、
「私、
成り行きで協力はしたんですけど、それが本当に正しかったのかどうかとか……」
「正しかったかどうか?」
「一昨日、
少女の説明に対し、
「ん?」
猫の子供? 気になるワードが出てきたが、
「その箱が何なのか、
「あ……えと」問い掛けは先を越されてしまい、
「あちゃ~」
中学生は「身振り手振りの多い人だ」と感想を抱いた。表情豊かで、
胸に安心感が芽生えたのもあり、自分にとって重要な事柄へ踏み込むことにした。
「やっぱり、あの箱って――」
しかし、
「あ、待って!」
「……」
信じた瞬間に、そのような期待外れな反応をするのか――
「ごめんね~」
その片手がスラックスのポケットからスマートフォンを取り出す。子供の上目遣いを受け止めながら、彼は手早い操作でどこかへと電話を掛けた。
「あ、もしもーし、
「体調は大丈夫ですか? あ~、大丈夫なら何よりですー、へへ、本当に。
実は、さっきレナちゃんが『ヨッシーどこだー!』って居座って、大変だったんですよー。『話したいだけー』って言ってたんですけど、何の用か、心当たりあります? ないっすかー。なんなんすかねー」
「あと、
そんな人物と探偵が貸し借りしていた物とは、何だろうか?
レナの言っていたエーブイ? エーブイって何だ。
「で、ですよ。こっからが本題です。
今すぐ、事務所に来てください」
!
「
何の事情も話さないで協力させたそうじゃないですかー。不安になってるみたいだから、責任持って説明してあげてください! そう、不安がってます! めっちゃかわいそうでしょう!」
「あの、
急に呼び出しては、むしろそれで迷惑を掛けていないか不安だ。誇張しているのも気になる。
あと、猫の子供って何だ。疑問は絶えない。
「
目の前の男性は
どういう意味だ! 不安だ!
話は続く。
「あの調査も終わったみたいですし、話せる範囲だけ教えてあげましょう。巻き込んだのはこっちなんですから。
……お、来てくれるんですね! じゃ、お茶を出して待っててもらいますんで、よろしくお願いしまーす!」
陽気な声の後は、画面をタップしてスマートフォンをポケットに戻した。
「あの、いいんですか? 今日、お休みなのに。しかも体調が悪いって」
「体調は平気そうだったから、大丈夫だよ。無理そうな時は、無理って言う人だし」
「そうなんですか……?」
「それより、信用問題の方が重要! ここはね、地域密着型、信用第一でやってるの。
「そうなんですか……」
確かに「地域密着型」の文言は
とにもかくにも、
「30分ぐらいかかると思うから……そうだな、この探偵事務所のことと、
電気ケトルの口から湯気が上がった。
「お菓子は好き? 昨日、お客さんに出すやつを買い足したみたいで、色々あるよー」
「えと……いいんですか?」
「遠慮しないで! 協力してくれた、天才少女だもん!」
「天才少女?」
また新しい肩書きをもらってしまった。
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