1―32 見せてもらいます
その頃、
霊感探偵
「
リュックサックの中で、自分が憧れる強いヒーローや怪獣に宝箱を守ってもらっていました」
彼の抱えていた、感情を。
「お母さんがお父さんをにらむ顔が怖いから、わざとうるさくして自分が怒られていました。
妹が泣くのを止めたくて、目の前でオモチャを出したり、代わりに『帰る』と言っていました」
彼の、記憶を。
「
だから、おじいちゃんの――
「そうだったんですか……」
意図せず腕が外れてしまったことは、
だから、とっさに隠してしまった。みんなでパーツを探して、自分が見つけたことにしようとした。
だがことは
「しらない」「ぼくじゃない」と言っている間に、
つぎこそは、おじいちゃんにかえそう――
つぎは、なかった。
おじいちゃんは、どんなにかなしかったろう――
しょうじきにいえば、こんなことには――
ぼくは、どうすればいいの――
彼が思い詰める度に、パーツには激しい後悔が宿っていった。
だが、
だが、それでも――
「
やり場のない感情が、彼の中で渦巻いているようだ。
やがて彼が口を開く。
「だったら」
次の言葉は、深呼吸を挟んでから放たれた。
「どうして、
父は、泣き顔になっている。
「俺達を嫌いになって、リュックを捨てて、1人で帰ろうとしたんじゃないんですか」
罪を背負うはずの男には、事実が必要だった。
父のふがいなさのために死んだ息子は、父を恨んでいるべきだと考えていた。
そうであることを確認した後に彼がどんな行動をするつもりなのか、探偵は知らない。知ったことではない。
霊感探偵が突き止めるのは、世間が望み、当事者が思い込む都合の良い真実ではない。
事実だ。
遺された想いだ。
それが救済の光であれ、断罪の闇であれ、事実は、求めた者に必ず届ける。
「すいません。少しだけ、待っていてください」
目をつぶり、リュックサックを抱きしめた。
意識を集中して、まぶたを開く。
今なら、はっきりと見えた。
小さな体にたくさんの想いを宿した、犠牲者の魂が。
「今から、
霊感探偵の宣言を受け入れた子供が、近づいてくる。
間もなく
最期の記憶がよみがえる――
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