1―16 その亡くなった子って

美佳みか、今日の午後、暇?」


「スイパラ行こうぜ~。3時狙いでさ〜。今週は土曜の部活まで頑張ったから、ご褒美だ!」


「行きたい! ……あ、でも、ごめん」


「ん~? どったの、イクノン」


「今日は4時から塾だから、行けないや」


「あんだよ真面目かよ~! そんなのサボろうぜ~!」


「こら、あずさ。何を言ってんだい。今度にしよ」


「え~!」


「良いお天気だし、行きなよ。早紀さきちゃん、前は行けなかったでしょ。今日こそリベンジだよ」


「そうだぞ~! イクノンの分も食べなきゃな~!」


あずさちゃん、ケーキ大好きだもんね! でも食べ過ぎないようにね」


「俺に任せとけって! イクノンも宿題忘れんなよ~」


「ダイジョブ! 昨日、終わらせたもーん」


「出た~! ってことは、塾の時間までにゃんこ探しだな? 俺達が食べ放題してる間に、モフり放題する気だな!」


「どうかな。モフモフできたら良いけど」


「猫探しするの? 好きだねぇ」


「えへへ」


「でも気をつけるんだよ。下ばっかり見てると、怪我とか事故とかしちゃうから」


「だいじょうぶだよ! 早紀さきちゃん、お母さんみたい」


「サッキーはママッキーだからな!」


「なんだい、ママッキーって。

 でも、マジで気をつけなよ。最近、近くで事故あったじゃん」


「あ~、あの小1の子が死んじゃったやつね~。ジジイの運転、マジ怖いわ」


「そうなんだ。私、そのニュースあんまり見てないんだよね。事故があったのは、お母さんから聞いたけど」


「そうなの? 結構、流れてるよ。お年寄りの運転する車が交差点に突っ込んで、歩行者を何人もはねたって。それで、小1の男の子が亡くなったんだよ」


「ママッキーは交番のカメラ映像とか見た? 事故の数秒前ってやつ! 横断歩道へ歩くこの人と、この人と、この子が今回の被害者です、とか言うやつ~」


「ママッキーじゃない。ってか、ああいうの、なんか悪趣味じゃない? 色んな写真とか家族のこととか、いちいち強調し過ぎっていうか」


「そう? あ、あの死んだ子のママ見た? キレイで、髪もめっちゃ染めててさ。案外、テレビに出られてスター気取ってんじゃない? ま、子供は本当のお星様だけどなっつって~」


「あ・ず・さ。そういうの、言うもんじゃないよ」


「めんご、めんご~。ママッキーこっわ」


「でも、本当に可哀想だよ。おばあちゃんだかが飼ってる猫とその子が遊んでる写真とか、妹さんを大事にしてたとか、色々聞いちゃうとさ」


「……そうなの?」


「うん。テレビで言ってたし、ネットでも色々書かれてるよ。ウソかも知れないけどね。ほら、猫が好きって、美佳みかと同じじゃん。なんか、気になっちゃってさ」


「サッキーもにゃんこ好きだろ~」


「……その猫の名前って、わかったりする?」


「名前? あぁ、どっかで見たかな……んん、わかんないや」


「なんだ、野良猫だけじゃなく、家猫までイケる口か? 守備範囲広いな~」


「え? どういう意味? ……なんとなく、気になっただけだよ。

 ……あと、その亡くなった子って、リュックとか背負しょってた? あ、あと、誕生日!」


「急にどうしたんだい? リュックは背負しょってなかった気がするけど、誕生日なら――」


「お待たせ―!」


「お」


「メグミ~ン! おかえり~、今日はちゃんと手ぇ洗ったか~」


「いつも洗ってるよー! キレイだぞー! ぺたぺたー」


「ひえ~」


「こら! アンタらはすぐバタバタして!

 早く帰るよ! バッグ持って! 忘れ物はないね!」

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