第33話 アドレナリンの罠


 私は凝りだすと凝る派だ。ただ、パッと燃え上がって、フッと消えるが。例えるならそう、理科の実験でご存知金属ナトリウムの燃焼みたく。取り組んでるときは何か、色々あれもこれもと手を出してしまう。但し、取り掛かるまでが長いし、団体でってなると煙も上がらないけど。

小学校の夏休みの工作。しないとなぁ。しないとなぁ。しないとなぁ。であと1週間を切って重い腰を上げて取り掛かり、何か興が乗って結構大作が出来上がりかけるけど、仕上げの材料が不足してて。買いに行けばいいものを“もういっか”ってなって終わる。そんな感じの人間だ。

 中学の技術とか美術の先生に、山科さんは芸術家肌だから集中してる時のモードを最後まで維持できればねぇ。と残念な者を見る目で言われていたのは、いい思い出だ。つまり私は、やればできる素地はあるが、やらないからないのと同じだってことだ。才能はあるってことだよね!

 まぁ、ないものはないってことで常の如く諦める。色付けはまた材料が手に入ったらで考えよう。そしてついに、最終段階に取り掛かった。

 コットン×キャタピラ布で作るのは――そう!テレレッテレ~ 『下着セット』!ハーフパンツ直穿きみたいになってて、もう落ち着かないのなんのって。幸い布色がデニムブルー的な色味だから、カッコ悪!って感じでもない…のか?上だけ白にならないか錬成試してみる。あ、できた。え、これ分解なんだ。なに、何を分解したの?・・・漂泊したと思えばいいか。深くは考えまい。

 男物に作れるほど器用でも変態でもない。え?何がって?私が男の下着をまじまじと見るような人間に見えるのか?スポーツタイプのボクサーを参考に、男女別に合成。一応、父も従兄弟もいたから構造くらいは知識としてあるさ。と、ここであることに思い至る。そう、ここは異世界。人間たるヒューマンだけではないファンタスティポなワールドなんだと言うことに。聞くか?聞くべきだろうか?だが、聞かねば進まない。ここは恥を捨てて。


「グランって、尻尾あるの?」


 男女とは言え、今幼女な私が別部屋に振り分けることも出来ない私たちは、今ツインの1部屋だ。ベットくっつけさせて3人川の字は野営の時と変わらずだ。シーツごわごわするからこれまた外と同じで毛皮敷いてるし。もう、雨風凌げるのが透明の結界か不透明の建築物かの違いしかない。宿代1人小銀貨3枚が勿体ないきもする。これで料理さえ……許すまじ、実行犯。

 私の負の思考が深まる前に、息を呑むグランと顔を染めたウォルフが壁を背に座っていた私を見る。


「!??」

「な、何言ってんだよ!?」

「え、何。この話タブーだった?獣人的にアウト?」

「じ、獣人の尻尾の話題に触れるのは、その。余りよろしくない」

「あぁ、なるほど。獣人にとってはそういう感じのデリケートな話題なんだ。耳触らせてとかも?」

「じゃ、じゃぁお前、耳触らせろって言ったら、触らせんのかよ」

「人によるね。(*´Д`)ハァハァしながら触らせてって言ってくる見ず知らずの他人(へんたい)なら蹴り上げてるけど、友達とか知り合いでそこそこ交流持ってる人間に言われても、いいよぉって言うと思うけど」

「そ、そう言う、もんか?」

「ならば、耳を触らせてもらえないだろうか、カエデ」

「メリットがないから嫌だ」

「断ってんじゃねぇか」

「グランの角に興味はない。ふわふわしてないもん」

「ふわふわ……ふわふわさせれば…いや、だが」

「おい、血迷うなよ竜人!竜人としての誇りまで失うなよ?」


 自らの角を抑え苦悶するグランに、ウォルフが励ましにかかった。


「で?」

「何がだよ、今忙しい」

「いや、だから。尻尾あるの?」

「お前、この状況でまだその話続けるつもりかよ」

「いや、今服作ってるとこだから、知らないと進まないんだよ。あ、因みにちょっとこれでよさそうか見て。ウォルフ尻尾あるから構造がさ。マジックテープあれば、後ろでこう張り合わせるタイプってのも考えんでもないけど…あ、ファスナー作ってみるか」


 私は取り敢えずの試作1号をウォルフに渡し、穴あけタイプからファスナータイプを試してみるべく、ヴァンガルドさんに分けて貰った鉱物を錬成してファスナー作れるか試す。服や鎧の細々したところに、金属が必要かもと気付いて鉱物手に入てて正解だった。が、出来上がってしまったそれを取り出し、ちょっと思った。


「ウォルフの腰ベルト、私作れたかも」


 フライパンと鍋、作れんじゃね?と2つの鉱石をセットして合成してみたけど、流石にそこまでの合成はできなかった。何だろう。Lvが足りないのか、鍛冶スキルがないとダメなのか。でも小物程度の金属加工なら可能と。一旦金属加工についての検証は置いといて、服作りに戻ろうとウォルフを見ると、何故かグランともどもすっっっっっごく複雑そうな顔で見られていた。


「何?」

「これ、さ。お前が、その…作ったんだよな?」

「そうだよ。下着ないと何か落ち着かなくない?」

「そりゃ、まぁ。その」

「要らないなら服だけにするけど?」

「要る。要る、けど」


 まぁ、年下の女の子とこういう話になるのは気まずいのは私だって分からんでもないぞ、少年。が、恥ずかしがったら負けだ。そしたらなんも話が進まん。私は気にせん。

 私が「何も気にしてませんが、何か?」と言う表情で見つめ続けていれば、屈したのは難しいお年頃の男の子だった。こう言うところ、お姉ちゃんの命令に逆らえない弟って感じなんだよねウォルフって。

 顔を背けてボソリと、問題ねぇって呟くので、一旦今のタイプで良しとする。よくよく考えると、私花も恥じらう乙女なのに、なに男性獣人向けランジェリーデザイナーばりに真面目にデザインを考えていたのだろう、と思考をクールダウンさせた。


「で?」

「人化してる状態では尻尾はない」

「…了解」


 流石にグランは年の功か、何処か諦めたような溜息を吐いてあっさり答えた。ちょっと引っかかる言い回しではあったけど、取り敢えず尻尾は無しっと。

 私は各自3枚と男性陣にTシャツタイプの上を作り、自分用にはキャミタイプにして試作は終了した。


「さ、次次~」

「今度は、何を作るんだ?」

「服だよ。多少丈夫には作るけど普通の服」

「そうか」


 服の形は私の完成イメージ図がもとにその素材をセットすると自動作成してくれる。まずはグランかな。

が、そっから興が乗って思うままに各人のイメージで色々カスタムして出来上がったそれらを前に、翌朝私は盛大に唸った。まだ現物取り出してないけど。

 まずパンツはいい。ポケット多目に、破れにくいスパイダー×キャタピラ布で作ったそれは、細部が少しばかり違くともここらの人が着てる物と…パッと見には違和感はない!はず。グランと私がスキニータイプ、ウォルフは攪乱系の前衛のイメージだから少しゆとりのある軍服タイプのパンツを作った。クロス紐だとか、サイズ調整金具とかはあるけど…見た目カッコいいしね。

 ただそれより問題は上だね。うん、ホント…集中しすぎた。脳内作業だったばっかりに、止める人いないばっかりに、調子に乗りすぎた。上は、スパイダー×キャタピラ×綿布の全mixで色合いを変えて、グランはハイネック、私とウォルフはVネックの其々ちょっとずつ装飾を加えたシャツ、各自3枚。まぁ、これもいい。こっちの服のデザインも加味して、私はV襟ぐりに、グランは袖と腰脇に、ウォルフは腕のところでクロス紐をあしらって、まぁ、グランのハイネック以外はこっちの形とそう違和感はないかもしれない。よく見なければ。

 が、その後続けて鎧代わりに革で上着を作った。ウォルフはライダー系のとミリタリー系のジャケットを腰に獲物下げることも加味して裾は短めに。まぁ、東京の街中いても何も言われないだろうという感じだ。作ってる布が、元々物理耐性と魔力耐性のある革をさらに掛け合せて高性能な代物と言うこと以外はまぁふつう。

 問題はグランだろう。ちょっと作り始めたのが、寝るように促すグランたちを無視して続け、夜中に差し掛かろうとしていた。あの時間帯のドーパミンでのテンションは少しおかしい。何だろう、眠い、でも楽しい。フフッ。って感じ?とにかく何を思ったか、私がイメージしたのは、ファミコンの時代から超進化を遂げたPSにもシリーズが続くあれ。そう、Fだ。超高画質、高性能なAI技術を駆使され、細部まで綺麗に作りこまれているキャラ達を見本としたロングトレンチ風のコートを思い浮かべてしまった。しかも、モデルがいいだけに、違和感が全くなく。リアルコスした時、「流石にギャグだって、痛いってやめとき?」って言えるフツーなメンズならきっと私も止めていた。途中放棄して眠りについたさ。でも、想像上とは言え脳内見立てで似合っていた。普通に雑誌見てる感覚で見れてしまったから、方向性変更もストップもかからずGoしてしまって、気付いたら寝てた。

 起きたら、保管庫の中には、それぞれ3着の上着兼革鎧が。外の中世ヨーロッパな文明と、時代が違うそれがある。そして、私のだけまだ1着もない。

 取り敢えず、自分の分は無難にライダージャケット風を革で作成した。もう、深夜のテンションは閉店したから、冷静にショップで売ってそうなんにしたさ。ただ、趣味が女子大生だから、6歳女児が着るには少し大人びちゃってるけど。全体的に。

 ベットに正座して腕を組んで考えること3秒。めんどくさくなって、もうこれでいいことにする。上着着なければいける。違和感ちょっとで済む。街中は認識阻害で移動するし、グランは外套あるし、私たちも外套買えば服は見えない。その作戦でいこう。

 そうとなれば、やることは一つ。いざ、試着!


■ カエデ ヤマシナ (6) Lv.8 女 ヒューマン

 HP 90/90  MP ∞  SPEED 7

 ジョブ:チャイルド

魔法属性:全属性 『上級魔法 Lv.100』『身体強化魔法 Lv.3』『治癒魔法(ヒール)Lv.100』『回復魔法(キュア) Lv.100』『完全治癒(リディカルキュア) Lv.100』『up 付与魔法 Lv.15』『特級火魔法 Lv.1』『古代闇魔法 Lv.I』

 スキル:『探索(サーチ) Lv34』『審眼(ジャッジアイ)Lv.27』『隠密 Lv.4』『逃走 Lv.4』『狩人 Lv.10』『スルー Lv.999』『万能保管庫(マルチアーカイブ)Lv.1』『ユニーク:絶対防御』『双剣術 Lv.10』

 状態:『若返り』『闘神の加護』

 称号:『異世界人』『怠け者』『食道楽』『料理人』『破壊魔候補』『自己至上主義者』『画伯(笑)』『発明者』『デザイナー』

 アイテム:奴隷[竜人:グラディオス]

      所持金 169,457,210ユール


■グラディオス (179) Lv.326 男 竜人

 HP 1,690/1,690  MP 2,690/2,690  SPEED 299

 ジョブ:戦闘奴隷〔契約主:カエデ・ヤマナシ〕

 魔法属性:闇・風・火属性 『古代闇魔法 Lv.X』 『上級風魔法 Lv.100』『特級火魔法 Lv.45』

 スキル:『隠密 Lv.89』『剣術 Lv.97』『体術 Lv.100』『暗殺術 Lv.60』『従僕スキル Lv.82』

 称号:『紫黒の死神』『始祖竜の末裔』


■ウォルフ:(9)Lv.13 男 獣人(狼属)

HP 125/125 MP 39/39 SPEED 194

ジョブ:孤児

魔法属性: 火・無属性『身体強化魔法Lv7』

スキル:『追跡術 Lv5』『噛千切 Lv5』『掻爬 Lv7』

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