第30話 仕事依頼
貴方はサンタを信じますか?私は、幼稚園の時にプレゼントを置く親の脚を見てしまい、小学校の時にXmasに血で染まった赤い服着て家宅侵入した強盗がいたとして、それはサンタだろうかって少しアホなこと考えて薄ら寒くなった山科 楓 希望いっぱい夢いっぱい 6歳です。
プレゼントは気持ちが嬉しいのであって、形は二の次だって誰かが言ってた。
「んじゃ、双剣3,000,000ユーグ、買取代金から差し引いて113,600,000ユーグだ。防具は本当にいいのか?」
「自前があるっちゃあるんで。今着てないだけです。でも、武器のことはよくわかりませんけど、安くないですか?」
安くすんでラッキーと思うことにはするけど、いいのだろうか。お金の遣り取りが高額になるからと、グランとウォルフ3人で再び通された店の奥。小金貨113枚で用意してくれたお金をグランが仕舞うのを見ながら、私はヴァンガードさんに真意を問う。
「双剣遣いなんざ、見たことねぇからな。コイツが育てば、将来新たな客層ができるってぇわけだ。鍛冶師としちゃ、新たなジョブ持ちを世に生み出せる、またとない機会だ。金積んでもできる経験じゃねぇからな」
どうもダンジョンで出る武器は、必ずしも知られているものではなく、如何使うか分からない代物もあるらしい。それを面白半分に模造しようと造る鍛冶師も如何かとは思うけど。
ディオルグさんたちと店を出る直前になって、大事そうに剣を抱えるウォルフを見て思い至る。
「忘れてた。追加の依頼いいですか?」
「おう。嬢ちゃんの頼みは、おもしれぇからな。なんだ、言ってみろ」
「ベルトもお願いします」
私も実物見たことがある訳じゃないから、多分こうなっているのじゃないかと言う想像と綺麗目な画のゲームの双剣使いを思い起こしながら、双剣ベルトを提案してみる。
「ウォルフ。とっさの時こうと、こう。どっちが手に取りやすい?」
肩越しに背中でクロスする忍びスタイルと、腰くらいの背中にクロスするスタイル、あと太もも双剣もあるなぁとパターンを思い浮かべながら、とっさに動きにくい動作でもなんだしと使用者にジェスチャーで尋ねる。
「こっち。腰の後ろあたりのがいい」
「なら、腰か太もものあたりに装着するタイプで」
「絵は描けるか?」
「笑わないなら」
「ちょっと待ってろ」
普通に出てきた紙とペンを借り、美術3の腕前で装着時イメージを描く。我ながら、可もなく不可もない絵だ。みんなで覗き込んで見られる絵でもないけど。
「動かねぇよう固定した方がいいのか?」
「どうなんでしょうね。着け心地次第じゃないですか」
「俺、こっちのタイプがいい」
私の絵を見て、指をさすのは腰位置の背中側に装着するタイプだ。まぁ確かに。ウォルフにはこっちのスタイルの方が似合いそうだ。
「分かった。んなら、坊主。それちょっと預けろや。調整すっから」
「・・・・・・・・返せよ」
「あたりめぇだろ」
「グラン、その紙は参考資料。戻しなさい」
しれっとイメージ図を懐に収めようとする盗人の脚を蹴り、現行犯で取り押さえる。明日また来るように言われ、私は前金 大銀貨1枚を置いて店を出た。
次は、私の大本命。生活用金属店だ。その前に腹ごしらえをと思ったところで、私は再びテンションが下がった。飯時にテンションが下がったことなんて、野外実習で馬鹿が米を洗剤で洗って炊いたって判明した時くらいだ。空腹マックスもあって心にゆとりもなく、何してくれてんだって、あの時人生最高に怒った。今は、こんなことになった犯人に過去一怒ってる。
急に暗くなった私に気付いたグランが、気遣わし気に頭を撫でて周囲を見渡した。
「カエデ、ウォークの実がある。他の果物類も買っておいたぞ」
「!!じゃぁそれで」
私はルンルン気分で一時休憩できそうな、空き屋の崩れた壁に向かう。
「おい、どこ行くんだ?」
「小腹が空いたから、朝買った果物を食う」
「なら、屋台街に出るか?」
「いやいい」
グランたちを連れ、大人の腰より低くなった崩れた壁に下ろしてもらって座り、リンゴ1個ずつ並んで食べた。今、私の生命線はリンゴにかかっている。街中で料理をするわけにもいかないし、誰かに食わせたら色々とめんどうなことになりそうな事案だというくらい、流石に能天気な私だって理解している。と、屋台街から外れているそこに、露店を開いてる猫獣人の子供が目に入った。
まだ布しか調達できておらず同じ服X日目の今の私も他人のことを言えないけど、ボロを纏った子供の前に何かが置いてあった。
ちょっと興味を惹かれてじっと見ていると、私の視線に気付いたディオルグさんがそれを追って呟いた。
「あぁ、スラムのガキだ」
「スラムなんてあるんですか?」
「ルアークは、孤児が多いですから。戻ってこない親が年間何人でることか」
「なるほど。何を売ってるんでしょう?」
「はずれの根だ」
「はずれの根?」
目のいいアドルフさんがぼそりと言った植物について、ディオルグさんが詳しく続けてくれる。
「あぁ。どんな荒れてる土地にも自生する植物で、実みてぇな根があってな。食べれることは食べれんだがよ。はずれを当てちまうと、腹下して最悪死んじまうんだよ。ここらは、街道が封鎖されりゃ、流通が止まるからな。食糧不足になれば、そう言うもんも口にすんだが。まぁ、平常時にそんなもん食わんはな」
「はずれの根」
思い当たるのはアレだな。私は壁から降りてその出店に歩き出した。抱っこしようとするグランをいなし其処に着くと、ビクつく子供らの前にしゃがんでそれを視る。
■はずれの根 (じゃがいも)
食用可。芽が出ると毒を持ち、嘔吐、下痢、発熱、幻覚を引き起こす。毒なし。
予想通りのそれを手に取り、尋ねる。
「これ幾ら?」
「おい」
「買うのか?」
私の質問に、子供らはポカンと口を開ける。
「あ、えと…10ユーグ」
「なら、ここにあるの全部買おう」
34個あるそれを指す私に、子供らは徐々に笑顔になった。グランを見上げ、よろしくと首を傾げる。グランはいつも通り、何も聞かずに大銅貨3枚と銅貨4枚を出すとその実をバッグに詰めていく。
「あの…えと」
「これさ、集めるだけ集めたら、1日で何個獲れる?」
「え、わかんねぇ。けど、集めようと思えば、いっぱい」
「そう…。君たち、仕事を頼まれる気はない?」
「おしごと…」
「ど、どんなだよ」
兄妹だろう男の子と女の子。女の子が私とそう変わらない風なので戸惑っていた2人も、仕事の話を持ち掛けた途端、流石に兄は警戒して妹を庇うように前に出た。
「ちょっとね。朝昼晩の串肉と1人 小銀貨 1枚出そう。それで、これを集めて欲しい」
「おい。それ食えんのかよ。毒あるかもなんだろ」
ウォルフの問いに、私は勿論だと頷く。
「食べれるってディオルグさんは言ってたでしょ。食あたり起こさないで済む方法も知ってる。そして、私はこれが欲しい。煮物に、揚げ物、上手くすれば片栗粉が作れる」
「ほ、ほんとか?」
顔を明るくした妹ちゃんを抑え、お兄ちゃんの方はいまだに警戒を解かない。まぁ、孤児は大人のいい鴨だろうしな。仕方がない。
「ほんとほんと。1人が100個以上集めたら、1個10ユーグで買い取ろう。但し、全部で250個までしか買取る気は無いから気を付けて」
よく分からないと首を傾げる2人に、2人が1日仕事を受けて201個取れたら、2人とも串肉3本と小銀貨1枚ずつ、そしてボーナス10ユーグを。もし250個だったら、ボーナスが500ユーグになる。ただし、それ以上は要らないから集めてもダメだと説明する。
「ほんとのほんとに?」
「ほんとのほんとに。受ける気があるなら、明日朝ここに集合。私が騙してればここに居ないはず」
「いなかったらどうすんだよ?」
「居なかったら居なかったまでじゃん。君らは、どの道明日もここに居るんでしょ?何も変わらない」
「…わかった」
「まってるからね、おねぇちゃん」
「集合は、朝10時の鐘が鳴るくらいにしよう。じゃぁね」
この街では、中央にあるこの国唯一の時計塔が時間を報せる。私はそんな早く起きたくない。出来れば、9時起床してのろのろしたい。
今度こそと店に向かう私を、ディオルグさんたちが複雑そうな顔で見る。
「何か?」
「スラムのガキは、確かに可哀そうだが、だからと言って同情してたらきりがねぇぞ」
「押しかける人間が、増えるかもしれん」
「そうですよ。ここは、危険な森もダンジョンもある分、戦えなくなった者や荒くれ者も多くいます。スラムの住人は、子供だけでもないんです」
「多分あぁいうのは、まとめ役のガキがいるだろうな」
ウォルフも分かっているのか、子供たちを振り返りそう溢す。
「弱い子供なりに、ここで暮らすってことはそうだろうね。まぁ、その時はその時」
「そんなもん、250個もどうすんだ」
「そりゃ食べますよ」
「だからと言って、マジックバックが周囲にバレれば、それはそれで問題なんですよ。それに、いくらなんでも腐りますって」
「なら噂になる前に街を出ます。めんどう事はごめんですし、言った通り長居する気はないんで。短期滞在で、グランがバックを奪われる心配はしてません。それから、分かっているとは思いますが、これで」
人差し指を立て口に当てたジェスチャーをした私に、何か諦めたような顔をする3人に私は微笑む。“シーッ”が通じたと。
■ カエデ ヤマシナ (6) Lv.8 女 ヒューマン
HP 90/90 MP ∞ SPEED 7
ジョブ:チャイルド
魔法属性:全属性 『上級魔法 Lv.100』『身体強化魔法 Lv.3』『治癒魔法(ヒール)Lv.100』『回復魔法(キュア) Lv.100』『完全治癒(リディカルキュア) Lv.100』『付与魔法 Lv.10』『特級火魔法 Lv.1』『古代闇魔法 Lv.I』
スキル:『探索(サーチ) Lv34』『審眼(ジャッジアイ)Lv.27』『隠密 Lv.3』『逃走 Lv.4』『狩人 Lv.10』『スルー Lv.999』『万能保管庫(マルチアーカイブ)Lv.1』『ユニーク:絶対防御』『双剣術 Lv.10』
状態:『若返り』『闘神の加護』
称号:『異世界人』『怠け者』『食道楽』『料理人』『破壊魔候補』『自己至上主義者』『画伯(笑)』
アイテム:奴隷[竜人:グラディオス]
所持金 170,097,210ユール
■グラディオス (179) Lv.326 男 竜人
HP 1,690/1,690 MP 2,690/2,690 SPEED 299
ジョブ:戦闘奴隷〔契約主:カエデ・ヤマナシ〕
魔法属性:闇・風・火属性 『古代闇魔法 Lv.X』 『上級風魔法 Lv.100』『特級火魔法 Lv.45』
スキル:『隠密 Lv.89』『剣術 Lv.97』『体術 Lv.100』『暗殺術 Lv.60』『従僕スキル Lv.82』
称号:『紫黒の死神』『始祖竜の末裔』
■ウォルフ:(9)Lv.13 男 獣人(狼属)
HP 125/125 MP 39/39 SPEED 194
ジョブ:孤児
魔法属性: 火・無属性『身体強化魔法Lv7』
スキル:『追跡術 Lv5』『噛千切 Lv5』『掻爬 Lv7』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます