第22話

 その後は、6体のキョンシーは華僑系大手探索団体側が特注品らしき

 棺桶に収納した

 手際は慣れているのか、素早く棺桶に収めた

 まるで、元いた『世界線』で観た事のあるキョンシー映画の一シーンの

 様な収納だったが、尋ねる事はしなかった

 面倒とかではなく、ややこしくなるからだ

(ここは何も言わないのが吉だ)

 彼はそう思ったのだ


 また、華僑系大手探索団体側と共に、数人の武装警備員が護衛として

 運搬用トラックに乗り込んでいく

(これから積み荷を目的地へと移送するのだろうか)

 彼はそう考えつつ、作業を見送る

「それでは江崎さん、今後とも宜しくお願いします」

 初老に近い容姿の男性が告げると同時に、他の二名と護衛の武装警備員が

 お辞儀をする

 嵩原も頭を下げて応じた

 華僑系大手探索団体関係者一同を乗せたトラックはエンジン音を

 響かせつつ出発した

「今後月1でキョンシーを捕獲すればいいんだな?

 ま、そのたびにあちらさんから成功報酬を『手野武装警備株式会社』へ

 支払ってもらえるからこちらとしては構わないが」

 嵩原がそう告げつつ、去っていくトラックを見送る

「何かとよろしくお願いします(まったく知らない事だらなんだが!

 どこのホラーゲーム!)」

 内心そんな事を考えつつも彼は顔に出さないよう努めた

 あくまでポーカーフェイスだ

「『怪異』は日本だけにしか発生しないから、海外からするとレア扱いの一つだ

 ・・・成功報酬が良いためかこっちの武装警備員の何人かかなり眼の

 色変えているのもいるから今夜も何人か荒寺へ派遣かもな」

 嵩原が肩をすくめてそう言った



 少ししてから再び彼の姿があったのは、五号『ダンジョン』内部にある

「ダンジョン」監視小屋からだ

 監視小屋から出た彼の姿は、『ネクロマンサーセット』装備品一式で身を

 固めていた

 見た目からして間違いなくRPGやラノベ書籍でよく見かけるような

 ローブやマント、骸骨を象った形の王冠や指輪、手甲を装着している

 これを着けるたびにため息を無意識に零してしまう 背負っていた

 バックパックには、簡素な食器類に各種治療道具が数点と、水を入れた

 マグカップ

 武器である闇夜と炎のように妖しい輝きを放っている短剣を持っている


「・・・これ本当に使って良いのか?」

 そう呟きつつ、掌に載せている『魔石』と呼ばれる鉱物に視線を移す

 拳よりもやや小さい程度のサイズで、どこか脈打つような

 光を放っている

 この鉱物は先日『英霊召喚陣』を開放した時に入手したものだ

 朝からの定時会議にも『魔石』の事を報告したが、やはりアニメや

 ラノベの様な驚きの反応とはならずかなり薄い反応だった

『幻神』型召喚陣という、『召喚陣』の中ではかなりランクの

 低い物だったためだ

 定時会議後、彼は五号『ダンジョン』へ赴く前に『召喚陣』について

 調べられるだけ調べてみた


 分かった事は『幻神』『聖灰』 『契約』型召喚陣は一部に過ぎない

 という事であり、高位の『召喚陣』は全て海外でしか確認

 できていないという事だった

 全てを調べる時間がなかったため、彼が書類で確認した限りで最高位の

『召喚陣』は―――

『女神』型召喚陣 『魔神』型召喚陣 『龍王』型召喚陣――だった

 最高位の『召喚陣』も全て海外『ダンジョン』でしか確認されておらず、

 日本には存在しない


 国内で発見されているのは全て下位『召喚陣』であると書類に記載されていた

 また特に欧州や北米では『召喚陣』市場というものが存在しており、個人が

 売買をしているとの事だった

 商品は最高位の『召喚陣』を開放から手に入れる高純度の『魔石』やそれと

 同時に天文学的な確率で入手できる希少性の武具や道具類といったものだ

 オークションも開かれるらしく、眼を通していた書類には去年の

 オークションでは『デュランダル』という聖剣が日本円で約470億5140万円で

 落札されたと記載されていたと記載されていた


「日本で『放置田ダンジョン』で発見されている『召喚陣』は、全て

 下位しかないとはな」

 彼はそうぼやきつつ、『魔石』をぎゅっと握りしめて数回シェイクするように

 振るって地面に叩き落とした

 その衝撃により魔石は砕け、細かい灰のような物へと変わっていった

 彼はそんな光景をただ眺めているだけではなく急いで、 左手の

 人差し指に嵌めている『ネクロマンサー』一式装備の一つ、

 指輪を外す

「本当にこれでいいのか? 『ダンジョン課』の『召喚契約方法』によると、

 これで契約が成立するはずだが・・・」

 そう言いつつ魔石粉を風で飛ばさないように、先ほど叩き落とした

 魔石に撒く様に左手を向けると小さな風が彼の掌から放たれて、

 そのまま指輪の中に吸い込まれるように入っていった

 石礫の様なソレは粒子の様になって消える

(マジか)

 内心でそんな事を考えて、息を呑む

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