第20話
彼が所属する『日本探索者協会』の業務には、当然ながら周辺地域の
治安を一定レベル保つ仕事の他に、『ダンジョン』から産出される
資源などを集める事も含まれている
当然ながら、魔物やモンスターの素材も該当する
彼が絶句しながら今見ている中華世界での妖怪の一種と言えるキョンシーも、
その資源の一つだ
なぜ、中華世界の妖怪が日本国内の荒寺で出現するのかは彼には
まったく分からなかったが、この『世界線』では『そう言うもんだ』という
現実として受け入れることにした
「全部で6体だ。これを全てお前さんの営業取引先の華僑系大手探索団体様に卸す。
確かもうすぐ運搬用トラックを用意して、ここに来る手筈はずだが」
嵩原はそう言うと、檻越しにキョンシーを吟味する
「・・・(俺はそんな覚えがないが、どうやらこの『世界線』の俺が
華僑系大手探索団体なる所と取引してたのか)」
彼がそんな事を考えつつ、檻の中を覗く
(この『世界線』に元々いたわけじゃないから何とも言えないが、
確か国内の『放置田ダンジョン』から採集できる資源って
大したモノは無いんだよな?)
眉間に皺を寄せつつ、覗いていた彼の視界には恐らくだが中国系の
成人男性の平均身長よりやや高い150cmほどの背丈をした男性が
閉じ込められていた
服装も、テンプレートな清時代の満洲族の正装である暖帽と
補褂を身に着けている
額がお札で隠されているため眼を見ることが出来ない
「今時『業魔合体』儀式を行う探索団体があるとはな・・・
成功すれば『聖灰』系や『契約』系みたいな強力な召喚魔や霊体が
出来るが・・・このキョンシーを『合体材料』としても成功率は
二%も低いがな」
嵩原がそう呟く
「・・・(そんな事言われても、俺はこの『世界線』の人間じゃないんで・・
と言えたらどれほど楽か
というか、また新しい言葉か。『業魔合体』って何だよ)
そんなことを思いつつ彼は檻にいるキョンシーを見る
「華僑系大手探索団体様がご所望されていたキョンシーを材料に
『業魔合体』で何を創り出そうとしているんだ?
まさか、成功率が極端に低い『聖灰』系の『魔神』や『鬼神』、
もしくは 『契約』系の『幻魔』や『女神』なんかを創るつもりなのか?」
嵩原がそんな事を尋ねてくる
「あー・・・(こんな時は何て言えば良いんだ!?速攻で無難な対応をしよう)」
彼は頭をフル回転させ、考える
「――下手すれば国際問題になりかねないから、今のは忘れてくれ。
企業機密やら何やらがあるだろうからな」
嵩原は顎に手を当てつつそう告げる
(俺が知ってる範囲だと、あくまで俺のいた『世界線』基準だと
『合体』やなんなのは
しか知らないからなぁ)
彼がそんな事を考えていると、別の武装警備員が地下に降りてきて
嵩原の耳元で何かを囁いた
「どうやら以外に早く、取引先の華僑系大手探索団体様がキョンシーを
受け取りにきたようだ。
しかし、お前さんもなかなかやり手というか・・・。
契約金と成功報酬を合わせてどんだけ吹っ掛けたんだ?
それと必要経費もあちら持ちとは。
現場の武装警備隊は荒事担当で、交渉事は全て事務方だからなぁ」
嵩原が説明した
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