第13話


 頭が痛くなる問題だらけだが、今は担当することになった五号『ダンジョン』に

 ついて集中すべきだろう・・・と

 そう彼、江崎零士は思っていた

 XCP245『異世界水』を散布し『廃棄異世界』から最初の開拓移民集団

 数10名が到着してから、荷馬車に金属製の農具や工具、布製品、消耗品などを

 積んだ開拓移民が到着しはじめた

 彼らが持つ異世界製農機具や工具類は、植物に関する知識レベルもこの

『世界』の技術者達とは大きくかけ離れていた事もあって、当然の様に

 作業スピードは遅く、要最低限行動が出来るまではまだ時間がかかりそうだった



 特にゴブリンの群れが時折、開拓移民集団の建設中の拠点に姿を現すようになり、

 襲撃が始まっていた

 最初の開拓移民集団が徒党単位で協力しあいながらゴブリン達の襲撃を

 迎撃はしているが、 急ごしらえの戦闘行為しかできない彼らと、組織立って

 行動できるゴブリン達とでは戦闘能力も知能レベルも大きな開きがある

 結果、戦況は芳しくなく、戦闘に関しては素人同然の後続組を護りつつ、先の

 見えない状況に悪戦苦闘を強いられていた

 また、この『ダンジョン』には朝昼夜が存在しており、時間経過と共に現れる

 モンスターも違う様だった



 現在も時間的に昼を廻ろうとしている所で、奇声を上げてゴブリンの群れが

 開拓移民集団が建設中の拠点へ襲撃に出る姿がドローンから

 送られてくる映像で、視てとれた

 それに対応する開拓移民集団の数も徐々に増え始めている

「またゴブリンの襲撃かぁ・・・」

 彼はコップに注いだコーヒーをテーブルに置くと、半眼で映像を

 見つつ呟く

『野郎どもお客さんだ!! もてなしの準備をしろ

 派手に優しく歓待してやれ!』

 そう指示を出しているのは、最初の開拓移民集団を率いてきたリーダー格の

 男だった

『奴らも知恵をつけ始めている 次はもっと多くの仲間を引き連れて、この

 拠点に襲撃に来るはずだ』

 もう1人の開拓移民者が落ち着いた口調で現状を分析しながら

 意見を具申する

『どうする? 相手にできる人数なんて限られてるぞ?』

 この開拓移民集団のリーダーはぶっきらぼうに答える

『報告!! ゴブリン集団は多くても300程かと思われます!!』

 そう大声で報告をする部下からの報告を耳にして、リーダー格の男は

 やむを得ないと呟き 集団を仕切る号令をかける



 武装を整えた男達は即席で設置された木製の柵内に臨時陣地を形成して

 待ち構える態勢になる

 入口には鳴子代わりにロープを設置した簡易な物ではある

 疲労がピークを迎えようとしている様だが、士気は高い状態を維持している

 様だった


 ゴブリン集団は合わせたように奇声を発して押し寄せる

 ドローンから送られてくる映像からでも、開拓移民者達の動きや

 ゴブリンの 動きが手に取る様に分かる

 迎撃態勢を取る最初の開拓移民集団は、戦闘には慣れているのか、リーダー格の

 男の指示に従っている

『指示を待て!! 引きつけてから攻撃しろ! 遅れるな』

 最初の開拓移民集団の男達が武器を手に、迎撃態勢を取るなか 1人だけ

 弓を持つ男がリーダー格の男へ話しかけた

 どうやらその男だけは元から防衛組のメンバーなのか、弓矢を構えて

 周囲を警戒しているようだった



 弓を持った男はリーダー格の男に短く状況を説明すると、彼を促す様に

 声をかける

 すると彼はにやりと獰猛な笑みを浮かべると周囲に確認の意味を込めた

 号令をかけたのち答えた

『野郎ども! 盛大なおもてなしの用意はできたか?

 開戦と行くぜ!!』

 突撃してきたゴブリン達を迎えうつ様に、戦闘組の男達は一斉に

 叫び声を上げる

 武器が防具がぶつかる音が戦場に響き合う


『畜生!この糞ゴブリン、一体どれだけ居やがるんだ!?』

 戦闘組の1人が悪態をつきながらも、対応は的確に剣を振る

『怯むな!!数で押されるんじゃねぇよ!』

 髭面の男が豪快に声を上げつつゴブリンを蹴散らす

『次だ!次が来るぞ!』

 騒然とし、罵り合う声も防衛側は一丸となり迫るゴブリン集団を

 迎え撃つ

 木製の柵内へと辿り着くゴブリンは、涎を撒き散らし仲間の死体を

 踏み台にして 次々と柵内へと侵入しようとする

 すると、数十の矢尻が侵入しようとするゴブリンに放たれた矢が高々と

 放物線を描き降り注ぐ

 その矢は、次々とゴブリンに突き刺さり次々に倒れていく

 殺到しようとしていたゴブリンは、鎧兜や矢立といった防護具など

 一切持っていないため、降り注いだ矢は容赦無く突き刺さる

 突然の攻撃にゴブリン集団は戸惑う

『この糞ゴブリンどもめ! おもてなしは気にいってくれたかぁ!!』

 矢を放った男が啖呵を切りながら次の矢を弦に番えていた

 リーダー格の男が矢を放った男に向かい、何か称賛の言葉を

 掛けながら叫ぶ

 弓を構えた男は余裕そうな笑みを浮かべていた


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