第一章 ②病院にて
命が助かったことを
そのどちらでもない。
幼女の父も母も。
命は助かった。しかし。幼い我が子の卵巣や卵管や子宮までもが破壊されてしまった。女性としての機能のすべてが失われてしまった。
信じ
ほんの少し前まで。
寒い。暗い。家族は
父が嘆く。母が嘆く。
みかん畑で発見されたとき。すでに虫の息だった。下半身から大量出血していて死んでいるかのようにぐったりしていた。
意識が
緊急手術が施され命は助かった。しかし壊された体の内部は元には戻らない。
術後に全身麻酔から覚めたとき。両親の顔を確認すると
そうして再び眠りに落ちた。病院の真っ白いベッドに横たわって小さな寝息を立てている。点滴に繋がれてはいるものの。寝顔はいつもの通りに愛らしい。そして。いつもの通りに清らかだ。
いつもと何ひとつ変わっていないはずなのに。しかし変わってしまった。
……つぶらな
この先もうち続くであろう
ただただ
家族は失意に
数日後。
招かざる客が訪れた。その来客は
「今回の件は
しかし。代理人に悪びれる様子は
「ふざけるな! 金を払えばいいというものではない!」
「犯人はどこだ! 連れてこい! 許さない! 許さない……!」父親は逆上して
代理人を名乗る男はせせら笑った。これ見よがしに札束を積み上げはじめる。
「お金はいりませんから。口外いたしませんから。二度と私たち家族に関わらないでください。お願いですから出て行ってください。……出て行ってえっ!」
母親は幾千万もの言葉を封じ込めて泣き叫ぶのだった。
神無月の宇和島の夕刻。悲嘆に暮れて
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