返却

 しばらくすると、家の扉が開いた。

 そこから出てきたのは、妹の姿だった。

「お兄ちゃん、ただいま」

「妹⁈ 帰ってこれたのか?」

「うん」

「お母さんとお父さんは?」

「お母さんは知らないよ。私もわからない。お父さんは、家にいるんじゃないの?」

「会ってないの?」

「うん」

 っていうか森からどうやって家に帰ってきたんだよ。歩きじゃ30分はかかるよな。迷いやすい道なのに。喋りが棒読みだし、怖かったんだろうな。……多分。……そう……だよ……な……。

「それより帰ってきてくれてよかった」

「そうだ。お母さんとお父さんは板の下にいるんだよね」

「そういうことになるな」

「なら、私が帰ってきたんだし、助けに行こうよ」

「えっ? いや、やめた方がいいでしょ」

「私が行こう」

「姉貴、いいのか?」

「可愛い妹が言ってるんだし、妹が帰ってきてるくらいならいけるでしょ」

「確かにそうだけど」

「じゃ、行ってくるね」

 行ってしまった。嫌な予感があってなければいいのだけど。

 とりあえず、連絡を待つのみだった。


 時間をふと確認すると夜11時を回っていた。

「兄貴、みんな大丈夫かな?」

「ちょっとやばいな」

 眠りに着く前に、安否だけでも確認したかった。

 あれから何もなく、ただ、心配する心が大きくなるばかりだった。


 そして針は12時を指した時、ついにスマホに通知が届く。

 兄貴を呼んで確認することにした。

「兄貴、連絡きた」

「見よう。はやく」

「うん」

 緊張しながらメッセージを開く。

 お父さんと姉貴から来ていた。これを見るだけで嫌な予感がよぎる。

 まず、お父さんからか確認する。


『森の中にある板。失踪。自分の意思じゃない。』


「うっ」っと息をのんだ。

 次に姉貴のを確認する。


『森の中にある板。失踪。自分の意思じゃない。』


 嫌な予感が的中した。

「兄貴、やばいぞこれ」

「そ、そうだな」


 妹は帰ってきたとかじゃない。

 悪にされていたのだ。

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