次の短編はもう少し

 もう少し気楽に読める短編を書くべきかなあ、なんて思いますね。もちろんクオリティ重視で。

 もっとも、私が「クオリティ重視で」と書きはじめると盛大にズレた作品に仕上がるので、むしろ「気楽に」に焦点を合わせるべきなのかもしれません。


 最新作の『エステファニア・ヴィラロボス』はどうやら大ハズシなのです。


 自分で読みかえしてみますとなかなかな作品なんですが、どうやら読んでくださった数少ない人びとの大半は首を傾げなすったようで。

 いやあ、残念です(絶対に心からそう思っているわけではないにやけ顔)


 は? ゆかい? オチのないド不幸話を読ませられて評価できるわけないダロ!


 ――ってところなのかなとおしはかられる次第。作者的には「そっかあ」としか言いようもなく。


 ところで、ネタバレとかイイワケでなく、作者として純粋に気に入っているところがひとつありまして、第4話の語り手(《モレロス派のつかい》)の《死んでいたら謝りますよ》というせりふ。好き。彼のこのいいように立ち会えただけでも、この作品を書いてよかったなと思っています。あと第2話の語り手(《神父》)が酒を目にしたところ(ひとつじゃないじゃん)


《そう言って、大旦那は椅子に置いてあった麻袋に手を突っ込んだ。その中身はまさしく酒だった。昨今、流通の激減から高騰しているだけではなく、税制の改革までもが重なって、衆庶しゅうしょにはいよいよ手が届かなくなっている、例外なく誰もが欲してやまない、この世でもっとも素晴らしいもののひとつである火酒……琥珀色のそれを見ただけで、記憶の奥深い層からまろやかな酩酊の心地が反芻されるようだった。》


 このセンテンスも気に入っています。くどくどしい説明が心のわななきを暗に示し、そして、それまで話していた教育や教会の話題は《この世でもっとも素晴らしいもののひとつである火酒》、《琥珀色のそれ》、記憶のなかの《まろやかな酩酊の心地》の前に吹っ飛び、彼の信条やらなんやらはあっさりと敗北してしまいます。


 もちろん、彼を肯定するのも否定するのも読者の自由。語らずさらさない情報の多い作品ですから、まさに想像におまかせでございますね。あとはお好きに、です。


 さて、次に短編を書くとしたら、もう少し各話を短くしますかね。たとえば1話3,000字弱程度で全10話とか?

 語り手の性質/声質にもよるでしょうけれど、私の悪文におつきあいいただくにあたり、1話4,000字超は度し難い苦痛をともなうだろうと思われますので。


『エステファニア・ヴィラロボス』は某作家へのリスペクトとある映画作品を観たときに得たインスピレーションが合わさったモチベーションで書き上げられましたが、私を次なる短編に着手させるきっかけは果たしてなにになるのか、楽しみですね。なんとなく、いくつかの訳詩に影響を受ける予感があります。


 まあ、ひとりよがりフィーバーが過ぎるので、なんとかもうちょっと、みなさまとわかちあえる作品を書き上げたいものです。共感とか感情移入でなく。

 ホントいまのところ自分とごく数名の方々だけですもんね、悪くはないって思ってるの。娯楽サイドからも文学サイドからも蹴っ飛ばされる作品ばかり書いているような気がします。やれやれにゃーごでございます。


 それではまたー!

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