第22話

 朝、起きるともうすでにに唯志の姿はなかった。

 だから余計に、昨日のことが夢のように思える。


『僕たち、兄弟だって』


 嬉しそうにそう告げた唯志。

 この結果を伝えるためだけに、フラフラの体でここまで来て……でもあれは夢だったのでは?

 答えは、テーブルの上のコーヒーカップが語っていた。

 朝、コーヒーでも飲んでいったのであろう、唯志のカップ。


(そっか。やっぱり夢じゃなかったのか)


 夢じゃなかったのか-そう思った後に、気づいた。


(俺、喜んでないのか?何故だ?)


 理由はすぐに分かった。

 公一だ。

 唯志と俺が本当の兄弟だと知ったらあいつはどう思うだろうか。それが、気がかりだった。

 時計を見れば、もう家を出なければならない時間。

 でも、公一に会うのが何となくためらわれて……


(ま、公一が朝一で来るとは思えないけど)


 ずるずると部屋の片づけなどをしているうちに、ふと片隅に見慣れないものを見つけた。


(何だコレ?)


 黒い袋に包まれた、四角い物体。


(いつからあったんだ?)


 中を開けてみれば、そこには一本の何も書いてないビデオテープが入っていた。


(公一のやつ、見ようと思って、それっきり忘れて置いていったのか?)


 すでに、一限の授業には間に合うはずもない時間。

 腰を据えて、俺はそのビデオを見るつもりでビデオデッキに押し込んだ。


(また、どうせホラーかなんかだろうが、ほんっと、しょーもな……ん?)


 だが、数秒の砂嵐の後に突然現れたその映像は、ホラーなどとはほど遠い感じの映像で、どちらかというと、いわゆる”アダルト系”のようで……


(公一……あいつ、俺の家でこんなの見るかよ、まったく……ん?何だ、コレ……男同士?!あいつ、そういう趣味だったのか?!)


 止めようとして、一瞬、画面見覚えのある顔を見つけたような気がした。


(まさか……)


 少し巻き戻して、画面をコマ送りにしてみる。


(……まさか……)


 リモコンを持つ手が震えるのを、俺はどうしても止められなかった。

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