第40話
ホテルまで馬車で送ってもらったミュリエルはフィンに手を引かれ部屋の中まで連れて行かれた。
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この続きは、『大魔術師は庶民の味方です〜ラブシーン〜』へお進み下さい。
⚫︎本編全体をレイティング設定にするほどラブシーンが無い
⚫︎全ての年齢の方に本編を引き続き楽しくお読み頂きたい
この2点からラブシーンだけ別途記載することに致しました。
読み難いとは思いますが、ご了承ください。
また、ラブシーンは本編のストーリーに影響を及ぼさないよう配慮しておりますので、読めない方にも安心して本編を引き続きお楽しみ頂きたく思います。
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フィンはミュリエルの体にブランケットをかけてからバスルームへ向かった。
瞼を閉じて寝そうになっているミュリエルを抱き上げてバスルームに連れていき、一緒にバスタブに浸かった。
「フィンさんは意地悪です」
「どうして?優しくしたよ」フィンは綿布で石鹸を擦り泡立てた。
「昨日と同じだって言いました。だけど全然違いました」
「ミュリエルがあんまり可愛いからついつい歯止めが効かなくなっちゃってね。でも、最後まではしなかっただろう?」フィンは泡立てた綿布でミュリエルの体を擦った。
「モーリスさんに言いつけます」ミュリエルはぷくりと頬を膨らませた。
「それだけはやめて。ミュリエル、俺が殺されてしまってもいいの?」フィンは青ざめた。
「では、モーリスさんにどうしてフィンさんが手慣れているのか聞き出してもらいます」
「それもやめて、俺きっと魚の餌にされてしまうから」
「手慣れている理由はそんなに酷いことなのですね」
フィンは悲しそうに呟いたミュリエルを抱きしめた。
「ミュリエル、愛してる。確かに過去に付き合っていた女性がいるし、こういう事も初めてじゃない。だけど今もこれから先もずっと、年老いて皺くちゃのお爺さんとお婆さんになってもミュリエルだけを愛してる」フィンはミュリエルの頭頂部にちゅっと口づけた。
「それなら許します」沢山の人に愛されすぎて自分は我儘になってしまったのかもしれないとミュリエルは少し嬉しかった。自分にも人並みの感情があるのだ。
アンドレとマドゥレーヌの噂を聞いた時、チャンスだと思った感情は間違っていると反省した。婚約者が別の女性に心を移しているのだから、悲しんだり怒ったりしなければならなかった。
もし今フィンが同じように他の誰かに心を移したなら悲しいはずだ。これが嫉妬という感情なのだとミュリエルは理解した。
「見ず知らずの誰かに私は嫉妬しているようです」
「嫉妬してくれるってことは俺を愛してるってことだろう?嬉しいけどミュリエルが苦しむのは嫌なんだ。ミュリエルが不安に思うことは何もないよ」フィンはミュリエルの髪の毛を洗った。
「フィンさんも嫉妬をしますか?」
「するよ、ミュリエルとアンドレ王子が話していると嫉妬する」
「アンドレ王子殿下は元婚約者ですが、子供の頃に決められた政略結婚です。心はお互いにありませんよ」
やはりミュリエルはアンドレの気持ちに気がついていないようだ。ミュリエルが王子妃を望むとは思えないが、不安が全く無いとは言い切れない。なにせアンドレの顔立ちはどんな女でも——男もだろう——虜にしてしまうほどの美しさで、まるで彫刻のようだ。アンドレには気の毒だがこのまま気がつかないでいて欲しいとフィンは願った。
「病院の打ち合わせとかいう
「子供の頃からお喋りが好きな人でしたから、マドゥレーヌ嬢と別れてしまって話し相手がいなくなりましたから寂しいのでしょう。すぐに飽きると思いますよ。子供の頃もそうでした」
これはアンドレ自身の行いのせいであって同情の余地はないなとフィンは思った。一度のしくじりのせいで、どんなに頑張ってもミュリエルの心に届かなくなってしまったのだ。自分は絶対にしくじらないようにしようと心に刻んだ。
「ミュリエルがアンドレ王子に気がないならいいけど、アンドレ王子は令嬢の憧れらしいからな」フィンはミュリエルの髪から泡を洗い流し、自分のことも洗った。
「ええ、マドゥレーヌ嬢が言っていました。剣術に優れていて男らしくて素敵なんだそうです。今は妃を探していますから、令嬢たちは落ち着かないでしょう」
「元恋人が子爵令嬢だから、シンデレラストーリーを狙っている女性も多いらしい、あれだけ顔がいいと他国からも求婚の申し出が来そうだな」アンドレの顔立ちがずっと気に入らなかったが、ミュリエルを射止めたのは俺なのだから劣等感を抱く必要はない。今度アンドレに会っても腹立ちを感じない気がした。
ミュリエルと付き合っていると知ったらあの綺麗な顔が歪むのだろうなと想像したら愉快な気分になった。
「モーリスさんがアンドレ王子は少し世間の荒波に揉まれた方がいいと言っていました。今回の争奪戦は丁度良いきっかけになるのではないでしょうか」
「そうだな、王族の結婚となると貴族間の牽制が激化するだろうし、第3王子だから比較的自由なんだろうけど、派閥は勘定に入れなきゃならないだろう」
ミュリエルはバスローブに包まり水気を拭き、魔法を使って髪の毛を乾かした。
「今のは魔法か?そんなことができるなら今朝俺がミュリエルの髪を懸命に乾かしてる時に何故言わなかった」フィンは裏切られた気分でミュリエルに非難の視線を送った。
「……心地よかったから」ミュリエルはぼそりと呟いて視線を伏せた。
その嬉しい理由と、可愛い態度にフィンの心は鷲掴みにされ囚われた。「それならいいや、ミュリエルが喜んでくれるなら毎日全力で乾かすよ」
フィンから抱き上げられたミュリエルはフィンの髪も魔法で乾かした。
「ありがとう。そういえば魔法でどんなことができるのか聞いてなかったよね、帰ったら教えてくれる?」
「はい、魔術書をお見せします」
フィンはベッドにミュリエルを横たえて、自分も隣に横たわった。
「おやすみミュリエル」
「おやすみなさい」
ミュリエルとフィンは揃って夢の中へと滑り落ちていった。
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