第36話 魔石獣の幼体「ヘイエイ」
魔獣を数体倒しながら慣れない靴のせいで生じた
正直動きにくい。
これから魔石獣の幼体と戦うのだから動きにくいのはデメリットにしかならない。私は近くに落ちていたガラスの破片でドレスの裾を引き裂いた。
アランには申し訳ないが今度弁償を誓う。
短くなって動きやすくなった私は広間を出て騎士団がいる入り口のドアを開けた。
ドアの向こうでは負傷した騎士団が魔石獣の幼体と交戦中だった。
一番の年長者、おそらく騎士団長らしき人物が力を振り絞って剣で魔石獣の幼体の額、魔石に傷を付けた。
魔石獣の幼体は悲鳴を上げながら前脚で団長を薙ぎ払う。床に身体を打ちつけた団長はうめき声を上げながら立ち上がろうとしている。
他の団員たちも剣を構えているが、それももう限界に近かった。彼らを駆り立てているのは使命感なのだろう。
例え命に代えても護るとかそういうの。無理はしないでほしい。
アランの用意しためでたい席なのだから死人は出したくない。息切れした騎士団の一人が私を見て目を見開いた。逃がしたはずの人がここにいたらそりゃあ驚く。
「カ、カレナ様!? どうしてここに。お逃げになったのではなかったのですか!?」
自分たちが頑張って食い止めていたのになぜ逃げなかったのかと言いたげだ。気持ちはわかる。
でも、私には戻ってでもやりたいことがあったのだから引くわけにはいかない。
魔石獣の幼体を見上げた。
姿は巨大な狐のような姿に翼が生えているが、幼体なので飛べるわけではない。
魔石は額と翼、尾は三又別れており先端にそれぞれ付いている。体長はだいたい八メートルくらいで尾を足したらもう少しある。
騎士団の魔力を吸収したのかすでに尾の魔石は微かに色を帯びていた。色は赤、水色、緑色でおそらく火、水、草系の魔獣を生み出せるようになっている。
ただ気になるのは純粋な魔石ではなく人工魔石が額に無理やり埋め込まれているせいか怒りと痛みで我を忘れているようにみえる。
「カレナ様! 今すぐお逃げください。時間を稼ぎます」
「逃げるのはそっち! 私が時間を稼ぐから怪我人を連れて今すぐ退避!」
「ですが」
「
狐型の魔石獣の幼体の名は昔読んだ資料から「ヘイエイ」と呼称を付けさせてもらう。
ヘイエイは私たちを待ってはくれない。
咆哮と共に赤い魔石から鳥型の魔獣を宙にいくつか生み出した。
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