第37話 リベラシオン
魔石獣の幼体は本来自らの攻撃力はなく、基本的には魔獣を生み出して魔獣経由で魔力を吸収する。
魔石獣の幼体を倒すにはまず魔獣を倒し、魔獣を生み出す器官を封じてから倒さなければいけない。
騎士団が顔を強張らせたのを横目で見て私はすぐさま銃弾を水系に切り替えて鳥型の魔獣が襲ってくる前に撃ち落とした。
床に水たまりがいくつも出来る。唸り声を上げるヘイエイが次の魔獣を生み出す前に私は銃弾を氷系に切り替えて水たまりに向かって撃てば氷柱が出現してヘイエイと私たちの間に隔たりを作る。
ひとまずこれで負傷した騎士団たちをホールへ避難させる時間を稼いだ私は騎士団へ声を張り上げた。
「今よ! 負傷した人を連れてホールへ急いで。氷柱はそんなに持たない」
弾かれたように騎士団たちは動ける人が負傷した人を抱えてホールへと急ぐ。私も
床に寝転がり浅く息をしている怪我人は傷口が深く出血が止まらない。
騎士団たちは全員もう動けないだろう。死人が出ていないことに私は安堵する。
怪我人たちを運ぶ馬車はまだ到着しそうになく、このままでは彼らはいずれ出血死する可能性が高い。
私は胸元のペンダント、髪飾り、チョーカーに着けていた魔石を外して怪我人の側でかざした。
「カレナ様、何を」
「リベラシオン」
魔石の力を解放すると淡く光りはじめる。
光は怪我人の傷を再生し始め、苦痛に歪んでいた顔は少しずつ和らいだ。
傷は癒えても流れた血が戻るわけではない。貧血状態は辻いており、危険な状態には変わらない。
「魔石の力で傷を癒しているけど、重症には変わりないから馬車が来たらすぐに医者へ診せて。それと、魔石の力を解放して誰でも扱えるようにしたから重傷者から順に傷を癒して。いい? くれぐれも勘違いしないでね。この魔石は私の友人のだから、貸すだけ。あとで絶対に返してもらうから!」
「え? あ、あの、カレナ様はどこへ?」
立ち上がって扉へ向かおうとする私に騎士団長が問う。
「当然、今からヘイエイの討伐に」
「無茶です。あれをお一人でなんて」
「全員怪我人でしょう。大丈夫、私は魔石獣の幼体と何度か戦ってるし。それよりも早くここから離脱して」
一人でヘイエイを討伐すれば魔石はすべて独り占めできる。誰かが加勢した場合は折半になる。これでよく師匠と揉めたっけ。
「カレナ様……。我々の身を案じて」
違うけど、ここで否定してる時間はない。私は曖昧に笑うと扉を開けた。奥ではすでに氷を破壊したヘイエイがこちらを凝視していた。騎士団の剣を借りて奥へと進んだ。
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