第28話 アーネスト・ネヴィル大公
ノック音に素早く反応したルイーズが扉を開けるとアランたちが迎えに来た。
彼はこちらを見ると一瞬固まったように見えた。口元を抑えたと思ったらすぐに引き締めて無表情になる。
「まあ、ふふっ。お兄様ったらカレナのドレス姿を見て想像よりも可愛かったからってそんな誤魔化し方はダメですよ。ちゃんと言葉にして褒めないと嫌われれしまいますよ」
ドレスの感想くらいで嫌いになんてならないし、むしろ直球で感想言われたら私の方が照れるからやめてほしい。
今では無表情を繕っているのが照れ隠しだと知っているからか、言葉にしなくても反応だけで察することができるからアランにはこのままでいてほしい。
アリスに指摘されたアランは言葉を探している。
「アラン様、早く行かないと」
急かすように彼に言うとエスコートするように手を差し出した。彼の手に自分の手を軽く乗せれば引き寄せられる。
私は練習した通りにアランの腕にそっと自分の手をそっと添えて歩き出した。
会場には貴族が華やかに着飾ってグラスを片手に談笑していた。
シャンデリア、丸テーブルに豪華な椅子、休憩用に設けられたソファー、音楽家たちの奏でる曲が流れる中にアランと共に現れた途端に視線を一気に集める。
それは決して好意のこもったものではなく、大半が嫉妬、値踏み、好奇の目だ。学園でも好奇の目で見られることはあっても熱烈な視線は初めてだ。
無意識に彼に添えていた手に力が入った。気付いた彼が私に手に自分の手を添える。
彼を見上げると無表情から私を安心させるためなのだろうけれど、微笑んでくれた。緊張が少し和らいだ。
「皆さま。この度は私と彼女、カレナとの婚約発表の場にお集まりいただきありがとうございます」
アランの挨拶に皆が静かに耳を傾けている。挨拶が終わりジェームス様たちに顔を見せた私たちは貴族たちへ挨拶回りを始める。
貴族たちの顔と名前はすべて頭に入れた。一番の難関はアーネスト・ネヴィル大公。侯爵の中でもさらに力を持つ権力者。
六十代の彼は
アランと共にアーネスト様の元に伺うと、グラスを片手に談笑していた彼は話しを止めてこちらを見た。頭の先から爪の先まで値踏みするような視線。
冷たい目はすぐに私からアランへ移り、穏やかそうな表情に変わる。
「アラン大きくなったな。この度は婚約おめでとう。君はこの先誰も嫁に貰わないと思っていた」
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