魔石の研究一筋の私ですが、突然冷酷と噂の侯爵と婚約することになりました~婚約後も変わらず魔石の研究を続け、魔石欲しさに領民を助けていたらなぜか溺愛されました~
第24話 疲労の色の濃い貴方に魔鉱物の花を
第24話 疲労の色の濃い貴方に魔鉱物の花を
疲労の色が見えるアランに癒しをと思った私は水系の魔鉱物と組み合わせて花を咲かせてみた。香りはラベンダーだ。
「どうですか? 少しは癒されるでしょう」
珍しいものを見たからか、アランはキョトンとしている。私は得意げな顔をしてずずいと彼の方へ咲かせた花を寄せた。
「あ、ああ。これは?」
「これですか? これはですね、花の魔力から出来た魔鉱物と水の魔力を持つ魔鉱物を上手く組み合わせて、あ。組み合わせ方はですね、花のロードライトっていう魔鉱物内の魔力をこうやっていじって魔力を循環させて、水の魔鉱物と……って、なんで笑うんですか?」
アランが興味を少しでも持ってくれたのが嬉しくて活き活きと身振り手振りで説明する私に彼は口元を覆いながら笑い始めた。
笑うほど面白い話をしたわけでもないのに。
「すまない。君があまりにも楽しそうに話すから見ていたら笑いが込み上げてきてしまって。不快にさせていたらすまない」
「いえ。不快には思っていないですけど、私の話を聞いてくれる人って少ないのにさらに笑う人って初めてで」
「そうか、初めてか。アリスは笑わなかったのか?」
なんでアリスの話題が出るんだろうと疑問に思いながらも私はアリスに語った時のことを思い出した。
「興味深そうに身を乗り出しながら聞いていましたね。そういえば聞いている時の顔は似ていました。さすが兄妹ですね」
「君の好きな物を知りたいと思うのは俺もアリスも同じだからな」
「そうなんですか? まあ、魔石、魔鉱物好きが増えるのはいいことですからいくらでも話しますよ」
「そう言う意味ではないけれど、こうしてゆっくりと君と話しが出来るならいい」
アランも魔石や魔鉱物に興味が出てきたってことなのかな。いい傾向だ。これからも話していこう。
「いい香りだな」
「アラン様がお疲れの様でしたのでリラックス効果のある香りを選んでみました。気に入ったのでしたらちゃんとしたの作りますよ」
「俺が疲れているように見えたのか?」
「ええ。違っていましたか?」
「いや。その通りかもしれないな。君に言われるまで気付かなかった」
「王宮での仕事はそんなに疲れるんですね」
私には想像しか出来ない。たしか今は師匠も王宮の研究室にいるんだっけ。あの人ならまあ、大丈夫な気はするけど。
「君は王宮の研究室に行きたいとは思わないのか? あそこは最先端の設備と優れた研究者それこそルーシー殿を筆頭に揃っているだろう。興味はないのか?」
問われて私は首を傾けた。王宮の研究室のことは知っている。けれど行きたいと思ったことはない。
「興味がないと言えば嘘になります。でも、行きたいと思ったことはないです」
「理由を聞いても?」
「だって王宮って不便じゃないですか? フィールドワークするには遠いし、なんか都度外出申請しないといけないとか面倒くさいじゃないですか。絶対に嫌です」
理由を話しただけなのにアランはポカンとして次に笑い出した。
「ははは。理由が君らしいな。……どうして君は魔石や魔鉱物の研究に一生懸命なんだ?」
過去、色んな人に何度も聞かれた問い。その度に適当な理由ではぐらかしてきた。
でも、何故だろう。この人になら話してもいいと不思議と思ってしまった時には口を滑らせていた。
「アラン様は地下都市キキーイルって聞いたことありますか?」
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