第3話


 数日しても彼は和希の観察を辞めなかった。

 友だちといるときでさえ、和希を見つけてはじっと見つめていた。それは周囲の視線を気にもとめない和希が気に留めるほどで、一緒にいる友だちが疑問に思うほどだった。


「ほら! やっぱじゃん!」


 そして決定的瞬間を捉え、彼は和希に詰め寄った。待ちにまった瞬間だ。


「見てたから! 今のは!」


 渡り廊下の、人通りの少ない時間。

 今日の落とし物は、キャラクターのキーホルダーだった。どこかのお土産だろうか。和希が苦虫を噛んだような顔をしていたけれど、彼はお構い無しだ。


「言い逃れできないからな!」

「うるさい」

 

 不機嫌な和希を気にもとめず、立ち去ろうとする和希の横をくっつくようにして彼は歩く。


「まさか超能力?! スゴいじゃん! 隠すなんてもったいないよ!」


 1人考え込んでいたかと思うと、彼はそう声を上げた。

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