第4話


「そうだよ」

「まじで?! スゴいじゃん!」


 適当な返答に目を輝かせる少年をみて、和希は明らかに顔を歪めた。


「お前、バカだろ」

「や、まあ、そうなんだけど」


 今度は皮肉に返ってきた頷きに、固まった。


「…バカにしに来たのか」

「何を?」


 まるで時間が止ったかのように静止した2人の姿はあまりにおかしくて、笑いだしてしまいそうだった。


「……超能力」

「そんなわけないじゃん。どこにバカにするとこがあんだよ」


 あっけらかんと返された言葉に、和希は会話の辻褄を探しているようで、また黙り込んだ。


「信じないだろ、そんなもん。普通」

「普通、か」


 数秒して、やっと言葉のままかと行き着いたようだ。

 しかし会話はスムーズに続かず、今度は少年が口を閉ざした。


「知ってる。でも、隠し事してるせいでひとりなんて、それこそもったいないだろ」


 数秒して、少年は真っ直ぐに和希を見据えた。


「…なんの話?」

「そっちの話。隠し事って大変じゃん。だから、ひとりでいるんじゃないの?」


 きょとん顔の和希に、少年は首を傾げる。どうやら彼は、すべての事象を合点のいく形で結びつけたようだ。その答えはあまりにも真実からはかけ離れていたけれど。

 そんな少年が、突然慌てだした。


「あ、いや、学校ではって話で!」


 和希はまた、真一文字で口を結んだ。

 

「ひとりじゃない。俺は、ひとりじゃない」


 絞り出して、少し声を荒げて。どう見ても怒った様子で、和希は少年に背を向けて歩きだした。

 

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