No44『飛んで■に入る。』 創(x @start_tsukuru)

※講評内で作品の内容に触れております。

 致命的なネタバレにはならないように考慮していますが、

 一部・ミステリ的なギミックなどの種を割ることがあります。

 ご了承ください。

◇◇◇

https://kakuyomu.jp/works/16817330661907536694



弔いとは、生者のために行なうものです。


彼岸に逝ってしまった死者と生者は二度と交わることがありません。

故に死者の「死」を認め、死者がいない明日を生きるための区切りとして、死者の弔いは執り行われてきました。


それは人間以外の非人間生物に対しても同じこと。


本作は、特定の「虫の死骸」に対して怒りを覚えるという奇癖を持つ語り部の虫ガキが、ニコ姉と出会うことによって虫を「弔う」ことを学ぶ物語です。


魅力的なお姉さんに惹かれる虫ガキは、しかし、自身の奇癖と、それを眺めるときになぜかニコニコと笑みを浮かべるお姉さんの真意について悩みます。


ある意味では「虫取りをするガキをニコニコしながら眺めるお姉さんの謎」の基本に立ち返るが如く、その道行きに大きく存在を示すのは「謎」です。


「なぜ?」 お姉さんはニコニコと笑うのか。


虫ガキ自身にも理由がわからない、内から湧き上がる「虫の死骸」に対する怒りと向き合ったとき、虫を「弔う」ことで虫ガキは自分自身の性(さが)に対する赦しを得ることになる。


本作の虫ガキには、ニコ姉とは別に、彼のことを憎からず気にかけてくれる実姉がいるようですが――「正しいこと」が常に人の救いになるとは限らない、ということですね。


今作はニコ姉も実姉もどちらもかわいいので、なんだか虫ガキがひどく羨ましくなってしまいました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る